太陽光発電で売電収入を得たい方は、もっと発電量を増やしたいと常に考えているのではないでしょうか。太陽光発電は日照量によって発電量が決まるため、冬場や天気の悪い日などは発電量が少なくなります。その解決策として、パワーコンディショナの積載容量を超えて多くのパネルを設置する「過積載」が注目されています。
今回は太陽光と過積載について解説します。
太陽光の過積載とは
太陽光の過積載とは、通常のパワーコンディショナ(パワコン)の容量を超えて、多くの容量の太陽光パネルを設置することです。
たとえば容量が49.5kWのパワコンに75kWの太陽光パネルを設置するなどです。
過積載をする理由は、50kW未満の低圧のまま発電量を増やすことができるからです。
50kW以上の高圧になると、キュービクルという電気設備や手続きを追加で行う必要があります。過積載は、コストや手間が増える高圧よりも低圧のまま最大限発電量を増やすためのテクニックです。
太陽光パネルの総容量が50kWを超えていても高圧にならないのは、太陽光発電システムの容量が、太陽光パネルの総出力とパワコンの総容量のいずれか低い方と決まっているからです。そのため、パワコンの総容量が50kW以下であれば太陽光パネルの総出力が50kWを超えていたとしてもパワコンの総容量が採用されるため低圧扱いになります。
また、過積載はパワコンの台数を抑えることができますので、初期コストを低減させることができます。
スーパー過積載とは
スーパー過積載とは、一般的な過積載以上に過積載率が高いものです。主に過積載率が150%を超えたものを指します。太陽光パネルの総出力が75kWを超えたものがスーパー過積載といえるでしょう。数年前までは過積載率は120%程度でしたが、最近では200%超えのものもあるようです。過積載の実績からより過積載率を大きくしても問題が発生しないと徐々にわかってきたことで、過積載の事例が増えつつあるからです。
スーパー過積載によって得られる最大効果は発電量の増加です。
パワーコンディショナ総容量(49.5 kW)を変えずに、太陽光パネルの総出力だけ増やしていった場合、以下のようになります。
積載状態 | 過積載率 | 太陽光
パネル 総出力 |
年間
発電量 |
年間の
売電収入 |
売電
収入差額 |
20年間
売電収入 |
買取価格 |
通常
積載 |
100% | 49.5kW | 49,500 kWh | 64.35
万円 |
0円 | 1,287
万円 |
13円/kW |
過積載 | 125% | 61.875
kW |
61,875
kWh |
80.4375
万円 |
16.0875
万円 |
1,608.75
万円 |
|
スーパー過積載 | 150% | 74.25 kW | 74,250 kWh | 96.525
万円 |
32.175
万円 |
1,930.5
万円 |
|
175% | 86.625 kW | 86,625 kWh | 112.6125万円 | 48.2625
万円 |
2,252.25
万円 |
||
200% | 99 kW | 99,000 kWh | 128.7
万円 |
64.35
万円 |
2,574
万円 |
年間発電量の計算方法は、パネル総容量の1,000倍という太陽光発電協会JPEAのQ&Aから目安が出ているのでこちらを採用しました。
スーパー過積載にすることで、年間発電量が約1.5~2倍もアップすることがわかります。
2020年度の固定価格買取制度(FIT)10kW以上50kW未満は13円/kWです。
売電収入で見ると、年間で約16万円~64万円増加しています。FITの買取期間20年間に換算すると、321万円~1,287万円も違いが出てきます。
過積載の費用対効果
スーパー過積載にすることで年間発電量、売電収入が増えることがわかりました。
しかし、実際の利益は収入だけでなく、費用も含めた算出をすることで収益化できているかがわかります。
スーパー過積載にするためにはどの程度の追加費用が発生するのか、そしてその時にどれだけの利益が出るのでしょうか。
過積載率150%の場合
「令和3年度以降の調達価格等に関する意見」による事業用太陽光発電の規模別のコスト動向を見ると、2020年度10kW以上の事業用太陽光発電の設置初期費用は約30万円/kWとなっています。
49.5kWの場合、初期費用総額は1,485万円(パネル費用594万円、パワコン費用183.15万円)となります。
過積載による追加費用は太陽光パネルの総出力が増えることですので、太陽光パネルの枚数が増えることによって追加になる部材・工事の費用になります。
費用内訳は、パワコンと接続費を除いた、パネル、架台、その他の機器、工事費、土地造成費です。
パワコンと接続費が追加費用に含まれないのは、太陽光パネルの枚数が増えてもこの2項目の機器数や工数が増加しないからです。
よって5項目のkW単価の合計額と49.5kWから増えるkW数をかけたものが追加費用になります。
追加費用となる項目5つのkW単価の合計額は、25.3万円です。ここに値引きが適用され、23.22万円となります。(追加項目にかかる値引きは、値引きなしの合計kW単価30.3万円と、5つの項目の合計25.3万円の比率から、2.08万円とします)
過積載率150%のスーパー過積載のとき、追加費用は約575万円です。
追加となるkW数=74.25kW–49.5kW = 24.75kW
追加費用=23.22万円×24.75kW=574.695=約575万円
売電収入は年間29.7万円、20年間で594万円増えますので、スーパー過積載によって増える利益は1,169万円になります。実際には、太陽光パネルの劣化やメンテナンス費用を考えると利益は若干減りますが、それでもスーパー過積載の効果は十分といえるでしょう。
参考:令和3年度以降の調達価格等に関する意見(https://www.meti.go.jp/shingikai/santeii/pdf/20210127_1.pdf)
過積載率が上がるほど利益も大きくなる
過積載率別の利益額をまとめました。売電収入、利益ともに20年間で算出しています。
2020年度10kW以上の事業用太陽光発電の設置初期費用は約30万円/kWです。
追加費用となる項目5つのkW単価の合計額は、値引きが適用され23.22万円です。
過積載 | 過積
載率 |
太陽光パネル
総出力 |
年間
発電量 |
売電
収入 |
初期
費用 |
追加
kW数 |
追加
費用 |
利益 |
通常
積載 |
100% | 49.5
kW |
49,500 kWh | 1,287
万円 |
1,485
万円 |
0kW | 0 | 1,287
万円 |
過積載 | 125% | 61.875
kW |
61,875
kWh |
1,609
万円 |
1,856.25
万円 |
12.375
kW |
287
万円 |
1,896
万円 |
スーパー
過積載 |
150% | 74.25
kW |
74,250 kWh | 1,930
万円 |
2,227.5
万円 |
24.75
kW |
575
万円 |
2,505万円 |
175% | 86.625
kW |
86,625 kWh | 2,252
万円 |
2,598.75
万円 |
37.125
kW |
862
万円 |
3,114
万円 |
|
200% | 99
kW |
99,000 kWh | 2,574万円 | 2,970
万円 |
49.5
kW |
1,149
万円 |
3,723
万円 |
過積載なしと比べると利益額は約609万円~2,436万円増え、200%のスーパー過積載の場合の利益額は約3倍になっており、過積載率が上がるほど利益が大きくなることがわかります。
過積載率が高くなるほど初期費用が高くなりますが、その分売電収入も多くなりますので、利益額が大きくなっています。
過積載の注意点
過積載は太陽光投資の利益額を大幅に増やしてくれるテクニックです。気を付けるべき注意点は以下の通りです。
収益構造においてはバランスが大切
1つ目が「収益構造においてはバランスが大切」です。
パネルを多く載せるため売電収入を上乗せできますが、過積載率の上昇に伴う初期費用増加やパネルにかかるコストも高くなります。結果、投資金額がかさんで、回収に時間がかかるリスクが生じるため、収益構造においてはバランスが大切です。
ピークカットによる発電ロスよりも過積載による発電量アップの効果が大きい
2つ目は「ピークカットによる発電ロスよりも過積載による発電量アップの効果が大きい」ことです。
過積載は太陽光パネルの総出力がパワコンの総容量よりも大きい状態です。
パワコンの容量よりも太陽光パネルの出力が大きくなると、発電した電気が多すぎてパワーコンディショナで出力しきれず、捨てることになります。つまり、太陽光パネルでいくら発電しても、売電できる上限はパワコンの容量で決まってしまうのです。
このような現象は主に発電量がピークを迎えるタイミング(季節であれば4月、5月。1日の時間帯では昼間)に発生します。発電のピーク時の発電量カットが発生するため、「ピークカット」と呼ばれています。
ピークカットは、過積載率が高くなるほど大きくなっていきます。このピークカットによって失う発電量の割合(ピークカット率)は大体3%~10%とあまり大きくありません。
そのため、ピークカットによる発電ロスよりも過積載による発電量アップの効果が大きくなります。ですから、過積載、スーパー過積載をする方が大変お得となります。
パワコン故障時に保証を受けられるように、過積載に対するメーカー保証がある機器を利用する
3つ目は「パワコン故障時に保証を受けられるように、過積載に対するメーカー保証がある機器を利用する」ことです。
パネルを多く載せすぎてパワコン故障時に保証を受けられるように、過積載に対するメーカー保証がある機器を利用しましょう。一般的にパワコンの容量の1.3倍程度のパネル出力なら保証が付くケースが多いようです。
入力電圧と入力電流の条件を満たしていれば定格容量を超えたパネルに対して接続容量の制限がないものをオススメします。
入力電圧:仕様規格項目を保証することができる周波数の範囲
入力電流:電源装置に流れ込む電流
定格容量:取り出せる電気量の値
機種によって過積載率は異なり、だいたい120~170%です。そのため、過積載を行いたい場合は、メーカー保証をしっかりと確認した上で実施しましょう。
パワコンのメーカー保証の条件が過積載率の上限を定めているメーカーがある
4つ目は「パワコンのメーカー保証の条件が過積載率の上限を定めているメーカーがある」ことです。
過積載は、設置済み設備へ3kW未満かつ3%未満の範囲に収まらない増設をすると、買取価格変更というペナルティが課せられてしまいます。
10kW以上2MW未満の太陽光発電設備におけるペナルティは、増設したときの最新の買取価格への変更です。
たとえば、2012年度の買取価格40円が適用されている設備を、2018年度に増設をしたとします。すると、元々増設前に設置していた設備も含む、全設備の買取金額が2018年度の18円に変更されます。そうなるとスーパー過積載で容量が倍に増加しても、買取価格が40円から18円と半額以下になってしまい、収益はマイナスとなります。
また、設備を持っていなくてもすでに事業計画認定を取得している場合もペナルティの対象となるのでご注意ください。
破損パネル交換による出力の増減も対象となり、過積載の追加費用を考えても採算が合わないため、設置済み設備のパネル交換や増設を検討されている方は慎重に進めましょう。
まとめ
太陽光と過積載について解説しました。以下、まとめになります。
・太陽光の過積載とは、パワコンの容量よりも太陽光パネルの容量の方が大きいこと
・過積載率が高くなるほど初期費用が高くなりますが、その分売電収入も多くなるので利益額が大きくなっている
・過積載に対するメーカー保証があるパワコンがオススメ
太陽光の過積載率が上がれば上がるほど利益額が大きくなっていくので、大変オススメです。しかし、過積載は設置済み設備へ3kW未満かつ3%未満の範囲に収まらない増設をすると、増設したときの最新の買取価格への変更というペナルティが課せられてしまいます。そうなるとかなり大損になってしまうのでご注意ください。また、パワコンのメーカー保証の条件が過積載率の上限を定めているメーカーがありますので、保証内容をよく見てから検討しましょう。
この機会に太陽光発電を取り入れて、過積載を試してみてはいかがでしょうか。