太陽光発電にとって重要なアレイとは? 角度や向きによって発電量は変わってくる!

太陽光発電を設置してみようと思って調べると、聞きなれない専門用語が出てきて行き詰ってしまう可能性があります。太陽光発電は太陽光パネル単体だけでは発電ができません。太陽光発電は、複数の太陽光パネルを機械的に架台に取り付けることによって発電を行います。
太陽光発電の単位には、セル・モジュール・ストリング・アレイとあります。太陽光発電所において「アレイ」は大きな発電を行うため、太陽光発電になくてはならない役割を果たしています。今回は太陽光発電のアレイという単位について解説しています。

アレイとは

太陽光発電で主に太陽光を吸収するソーラーパネルに使われるのは次の通りです。

・セル
・モジュール
・ストリング
・アレイ

それぞれに役割があり、またその全てを使って発電を行っています。
「アレイ」「ストリング」「モジュール」「セル」のいずれも、指しているのはソーラーパネルのことです。異なる点は単位であり、単位の大きさによって以下のような関係性になります。

アレイ>ストリング>モジュール>セル

これらの単語やその考え方を理解しておけば、どのようなシステム設計にするのがベストなのかイメージがしやすくなります。
それぞれについて詳しく説明していきます。

セル

セルは太陽光電池の基本単位です。太陽光発電のパネルを見ると格子状になっていますが、その小さな格子1つが「セル」となります。このセルが複数枚組み合わさって構成されたものがソーラーパネルです。
結晶系の場合、0.2㎜~0.4㎜の厚みの薄いシリコン版ウエハーにPN接合をし、電極を付けます。電圧は0.5V~0.6V、電流はその面積によって変わります。125mm角で5A位の電流が発生します。

モジュール

モジュールはパネル1枚の単位を表し、太陽光パネルと基本的には同じ意味です。
野外環境に耐えられるようにセルを必要枚数接続し、強化ガラスや樹脂フィルムなどで覆い、アルミ枠などで強化することによって必要な電流と電圧を確保します。
モジュールは各メーカーによって大きさや形がバラバラですので、屋根に設置できるモジュールの枚数はメーカーによって差が出てきます。モジュールサイズはパネルメーカーによって異なりますが、基本的に60セルの畳1枚ほど(1,600mm×1,000mm前後)のサイズが多いです。

ストリング

ストリングとはモジュールを直列で繋いだ回路のことをいいます。この回路はブロックやグループと言い換えることがあります。
適切なストリング構成が行われないと出力ロスが起こる場合があります。また、この繋ぎ方によって、陰の影響による発電量低下をある程度抑える事もできます。

ストリング設計のポイントは以下の通りです。
・可能な範囲内でモジュールはたくさん結んだストリングにする(電圧が強くなり、発電量が多くなる)
・ストリングが複数になる場合、各ストリングの枚数は同じにする(電圧が揃い、発電量をより多く引き出せる)

各ストリングの枚数が異なる場合、各回路の電圧を揃えなければいけません。その電圧を揃えることを「昇圧」といい、昇圧機能付きのパワーコンディショナーのことを「マルチストリング型」といいます。

アレイ

屋根にパネルを設置する時は、必ず架台に取り付けて設置します。アレイとは、その架台にモジュールを複数枚、直列あるいは並列に結線して架台等に設置したものです。複数の太陽電池モジュールを機械的、電気的に架台に取り付けた太陽電池群です。太陽光発電所では、このアレイをたくさん設置して大きな発電を行っています。
アレイ内のモジュールは、必ずどこかのストリングに接続されます。そのため、アレイはストリングを並列につないだ1つの塊といえるでしょう。アレイに組み込まれている太陽光モジュールの公称最大出力の合計がアレイの容量です。
モジュールで発電した電気はストリング内のすべてのモジュールを経由して、最終的にパワーコンディショナーへ集約されます。

アレイのサイズは太陽光発電を設置する土地の面積によって変わります。一般的には、縦の段数は風圧の関係から3段〜5段、横の列数は土地の幅と他のアレイのサイズとのバランスを取って決めることが多いです。

アレイの発電量

住宅用太陽光発電の場合、屋根の大きさきや形状などによってモジュールを組み合わせます。太陽電池モジュールを1枚設置しただけでは充分な発電量は期待できません。複数枚のモジュールを1つのアレイにすることで、太陽光発電システムは完成します。

アレイの発電量を求める式はW×枚数です。

たとえば、180Wの定格出力があるモジュールを20枚設置して、大きな太陽光電池アレイを作る場合、1つの太陽電池アレイから求められる出力は3.6kWになります。

180W×20枚=3,600W(3.6kW)

アレイの容量(kW)が大きければ大きいほどパネル全体の発電能力が高くなります。
しかし、アレイの発電量=太陽光発電システムの発電量ではありません。
なぜなら、アレイが作る電気エネルギーは「直流」だからです。一般家庭で使われる電気は「交流」ですので、アレイで発電した「直流」の電気エネルギーを使いたい場合、太陽光発電のパワーコンディショナーによって「交流」に変換しなければいけません。
この直流から交流に変換する際に、電気エネルギーはいくらかロスします。
パワーコンディショナーの性能はどのメーカーも軒並み同じですので、多くの発電量を得たい場合、アレイ(ソーラーパネル側)を気にしなければいけません。

アレイの発電量を最大値にするポイント

太陽光発電で充分な発電量を得たい場合、1つのアレイが最大値近くまで出力しなければいけません。
発電量の確保には、アレイが設置されている向きを考えましょう。太陽光発電のエネルギーは太陽光によって得られます。設置したアレイに太陽光が当たらなければエネルギーを作り出すことができません。太陽は東から昇り、南を通って西に沈みます。そのため、太陽の動きを無視して北側に向けてアレイを設置しても充分な発電量は見込めないでしょう。

また、太陽光パネルは入射角によって発電量が変わります。1日の中で発電量が1番多くなる時間帯は晴天の場合、午前11時から午後1時頃です。最もモジュール面に反射されにくい入射角度が90°で、この入射角度90°からずれていくほど反射される量が多くなります。入射角度が90°のときには、太陽光のほとんどがモジュール内部、つまりセルへ照射されてしまうからです。ただし、設置するエリアの緯度よって入射角度は微妙に変わりますのでご注意ください。

技術革新でアレイはますます進化する

一般家庭で太陽光発電導入を検討した際、屋根が南向きではないから導入できないと思うかもしれません。しかし、技術の進歩でアレイ設置時に前後左右に傾きを自在に調節することが可能となり、太陽光が当たりやすい南に向くよう調整することができます。更に、太陽光にあわせてアレイが垂直に当たるよう自動で動く架台も出てきています。このような技術革新により、今まで設置困難だった複雑な地形にも配置できるようになりました。

システム変換効率とアレイの関係

アレイの向きなどを考慮して発電量を確保したら、次はシステム変換効率も意識しましょう。システム変換効率とは取り入れた太陽光エネルギーを使用できる電気に変換する際の効率のことです。システム変更効率は以下の式で求める事ができます。

全アレイ発電量(W)×パワーコンディショナー変換効率(%)÷(全アレイ日射量(W/㎡)×全アレイ面積(㎡))

太陽光エネルギーをどれだけ交流の電気エネルギーに変換できるかということを表しています。
たとえば、アレイ全体に照射された太陽光エネルギーが1,000W、最終的にパワーコンディショナーから出力された交流電流のエネルギーが200Wの場合、システム変換効率は20%になります。
システム変換効率は、太陽光発電システム全体でどれだけ効率的に発電できるかという大まかな指標となります。システム変換効率とは、インバータの出力電力量を傾斜面の日射量とアレイ面積を掛け合わせ、除いた値となります。そのため、太陽光発電システムの変換効率を求める時にアレイの面積は大きく関係してきます。

システム発電効率は、アレイの設置面積や発電効率が大きく関わってきます。システム発電効率を求めるには「平均アレイ効率」が必要になってくるからです。「平均アレイ効率」とは、アレイに照射された太陽の光エネルギーから、どれだけ直流電流の電気エネルギーに変換できるかを表した指標です。つまり、アレイの設置面積や性能でどれだけの電力が得られるかが変わってきます。平均アレイ効率は以下の式で表すことができます。

アレイ発電量(W)÷(全アレイ日射量(W/㎡)×全アレイ面積(㎡))

平均アレイ効率はアレイごとに算出されますので、システム変換効率では気づきにくいアレイごとの微細な異常を検知できます。

発電量を見込むためにはアレイを意識する

セルの性能が高いモジュールを選ぶのは当然ですが、発電量は設置方法で大きく異なります。そのため、発電量を見込むためには、アレイを意識して設置しなければいけません。
太陽光発電設置を検討している場合、出力を得られやすくするために架台選びに力をいれるのがオススメです。

太陽光パネルは何十枚も屋根に設置しますので、できるだけ軽量化された架台を選びましょう。太陽光パネルは1平方メートルで重さが12~16kgあり、平均的な4kw程度の太陽光発電システムを組むと240~470kgが屋根に乗ることになります。屋根に負担をかけないために、少しでも軽量化されたものを選ぶのがいいでしょう。

また、発電量を少しでも多くするために、前後左右に角度を調整できる架台や太陽を追尾してくれる架台も重要です。

まとめ

太陽光とアレイについて解説してきました。以下、まとめになります。

・アレイとは、複数の太陽電池モジュールを機械的、電気的に架台に取り付けた太陽電池群のこと
・発電量をより多く確保するには、アレイ設置の向きと角度が重要
・発電量を確保したら、次はシステム変換効率にも気を付ける

太陽光パネル一枚では発電量は少ないです。そのため、太陽光パネルを縦横に組み合わせたアレイ設置の角度や向きが、太陽光パネルの発電量を最大化するために重要となってきます。最近はアレイの向きや角度を調整できる架台も出てきていますので、架台選びもこだわるといいかもしれません。

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