太陽光を売電するのに必要な系統連系! 売電開始に必要な手続きとは?

固定価格買取制度の導入により、一般家庭で発電した電気を電力会社に買い取ってもらうケースが増えました。電力会社と電気を売電・買電するために、電力会社の送配電網に接続することを「系統連系」といいます。
今回は太陽光を売電開始するために必要な系統連系について基礎知識から役割、太陽光発電システムを設置した後の契約までわかりやすくご紹介します。

系統連系とは

系統とは、電力会社の電気の配電線網のことです。
電力系統とは発送電設備をはじめ、変電設備、需要設備などを含む発電から消費までを担う電力インフラの総称です。
そうした電力系統を発電設備と繋げることを系統連系といいます。

私達が日常で使用している電気は電力会社から一方通行で供給される電力ですので、こちら側から発電した電力を送ることはできません。

太陽光発電システムの設置だけでは、作った電気を使用できても売電はできません。太陽光発電で作った電力を売電するには、系統連系申請をして、系統連系工事で受電する電力と接続しなければいけません。

系統連系することで、電力会社との間で「売電」「買電」ができるようになります。
「売電」とは、日中太陽光発電システムで発電した電気を家庭内で消費し、余った電気を電力会社の系統に送る事です。電力が電力会社の系統に戻るので「逆潮流」とも呼ばれています。

「買電」は、夜間や曇や雨など日中でも発電量の少ない時に、これまで通り電力会社から電力の供給を受ける事です。

買電量と売電量を計測するために、売電メーターと買電メーターを取り付けます。

連系区分

連系区分によって工事内容が異なり、電圧が上がれば上がるほど、工事費や管理費用が高くなり、管理費用にも違いが生じます。電力会社の連系区分は以下の通りです。

低圧連系

1つ目は「低圧連系」です。

低圧連系は設備容量が50kW未満の設備を、一般家庭や商店などの需要家が設置します。
200V以下の低圧線に接続するので、高圧連系、特別高圧と比較して工期や費用を抑えられるという特徴があります。

高圧連系

2つ目は「高圧連系」です。

高圧連系は小規模工場やビルなどに設置されている50kW以上2MW(2,000kW)の設備です。高圧線に連系をするため電力会社による接続検討に時間を要し、系統連系までの期間は長期化する傾向にあります。

また、発電設備と電力系統間の距離が短いと接続検討期間は短縮する傾向があります。

特別高圧連系

3つ目は「特別高圧連系」です。
特別高圧連系は2,000kW以上の大規模な発電施設に設置されています。
発電設備の他に昇圧設備や接続用の鉄塔などの設置が必要で、費用は事業者自身が負担しなくてはならないため多額の追加コストが必要になります。

電力会社による接続検討にも時間を要し、系統連系までの期間は長期化します。

系統接続における先着優先ルール

系統接続には、先着優先ルールがあります。

太陽光や風力も含めて全電源共通で接続契約申し込み順に系統の接続容量を確保するというものであり、公平性や透明性を確保するという観点からです。

新規の接続契約申し込み時に系統に空容量があれば容量確保ができますが、なければ系統の増強が必要となります。

空容量がない系統に別の事業者の接続を認めてしまうとすれば、既に容量を確保・登録している事業者が電源を稼働した時点で系統に制約が生じて送電できなくなり、事業者の事業予見性に影響がでてしまうからです。

系統連系に必要な設備

太陽光発電システムは太陽光パネルだけでなくパワーコンディショナーや接続箱、売電電力計などの周辺機器も合わせて設置します。

系統連系を行う場合には、必ず変圧と直流・交流変換などが必要となります。
太陽光発電システムで発電した電気は、直流電力ですので、パワーコンディショナーで交流電力に変換されてから系統連系します。

パワーコンディショナーは電力交換するだけでなく、電圧調整や周波数安定化機能も併せ持っています。パワーコンディショナーを経由することで、安定した電力供給が可能となります。

太陽光発電システムを設置したら、電力会社と買電・売電するための契約を締結します。

太陽光発電の売電開始に必要な手続き

太陽光発電の買電開始に必要な手続きは以下の通りです。

①事業計画認定申請
②系統連系申請

事業計画認定申請とは

事業計画認定申請とは、経済産業省から固定価格買取制度を利用する設備を認定してもらう手続きです。
事業計画認定申請では、以下のような太陽光発電の導入から廃棄までのサイクルを総合的に審査します。

・設計
・施工
・運用
・管理
・撤去
・処分など

設備が要件を満たしているだけでなく、ライフサイクル設計を適切にする必要があります。太陽光発電を事業目線で審査するため、計画の確実性が求められるからです。

事業計画認定申請に必要な期間

事業計画認定申請に必要な期間は、申請から認定まで1ヵ月から3ヵ月程度です。

ただし事前に電力会社と接続契約を締結しておく必要があります。そのため接続契約を締結してから事業計画申請をしましょう。

事業計画認定申請に必要な書類

事業計画認定申請に必要な書類は、太陽光発電の出力が10kW未満か以上かで異なります。

土地の取得を証する書類と建物所有者の同意書類はケースによってどちらが必要になるか異なりますので、自分が設置しようとしている太陽光発電に適したものを用意しましょう。

住宅用に多い10kW未満の場合、具体的な必要書類は以下の通りです。

・野立ての場合:土地の取得を証する書類(登記事項証明書など)
・屋根上設置の場合:建物所有者の同意書類(建物の登記事項証明書など)
・接続の同意を証する書類(接続契約書など)
・構造図
・配線図
・委任状(代行事業者が申請するケースのみ)
・印鑑登録証明書(代行事業者が申請するケースのみ)

事業計画認定申請の手続き方法

事業計画認定申請の手続き方法は、基本的に、経済産業省の電子申請サイトから申請します。

申請を業者に委託している場合は、申請情報を登録した後に設置を依頼した方の承諾手続きが必要です。

承諾しないと審査が始まりませんので、確認メールが届いたら記載されている内容に従って承諾手続きしましょう。

申請の流れは以下の通りになります。

①再生可能エネルギー電子申請サイトにアクセスする
②ユーザー登録してログインIDを取得する
③取得したIDで再生可能エネルギー電子申請サイトにログインする
④申請情報を入力する
⑤添付書類をPDFもしくはZIPでアップロードする
⑥認定されたら、認定通知書をダウンロードする

事業計画認定申請には期限日がある

事業計画認定申請には申請期限日があります。期限内に申請しなければ認可されず、売電することができなくなります。

また、申請期限日までに申請していても書類に不備がある場合手続きが進められないとして、年度内の認定が受けられない可能性があるので注意しましょう。

そのため、期日ギリギリではなく、可能な限り早めに提出することを心がけましょう。

系統連系申請とは

系統連系申請とは、一般送配電事業者が所有する設備に太陽光発電設備を接続するための手続きです。太陽光発電を設置した場所を管轄する一般送配電事業者に対して申請します。

申請を受けた事業者は需給バランスや設備の状況を確認し、問題がないことを確認してから連系承諾します。なぜなら、自宅で生み出した電力を売電するには設備側から送配電網に送電しなければいけないからです。

系統連系申請に必要な期間

申請から承諾が出るまで、約2週間から数ヵ月かかります。申請を受けた一般送配電事業者は技術的な検討を実施し、問題がなければ承諾します。

低圧連系の場合、通常は1ヵ月で承諾になるでしょう。ただし、申し込みが集中している場合や、大規模な工事が必要になる場合は承諾まで長期間待つことになります。

提出書類に不備があっても期間が長くなります。系統連系申請に必要な書類は、一般送配電事業者によって具体的な書類や書式は異なります。

そのため、事前に管轄の事業者に確認し、必要書類を漏れなく集め、必要書類はそろっているか、何かミスはないか、よく確認してから手続きするのがいいでしょう。

系統連系申請に必要な書類

系統連系申請に必要な主な書類は以下の通りです。

・系統連系申請書
・系統連系協議依頼票
・単線結線図
・付近図
・構内図
・主幹漏電ブレーカの仕様が分かる資料
・認定証明書(JET証明書)
・保護機能の整定範囲及び制定値一覧表

系統連系申請の手続き方法

系統連系申請の手続きの方法は以下の通りです。

①系統連系申請に必要な書類を用意する
②設置場所を管轄する一般送配電事業者の申請サイトにアクセスする
③申請内容を入力し、必要書類を提出する
④一般送配電事業者から連系承諾の通知を受ける

系統連系申請はオンライン申請、郵送で手続きをします。

太陽光発電の施工業者によっては、系統連系申請の代行が契約に組み込まれている場合があります。

スムーズに手続きを進めるためには、自分でオンライン申請するか、施工業者に依頼するのがオススメです。

売電開始後に必要な手続き

太陽光発電の容量によって、売電開始後の定期報告が義務付けられています。定期報告に含まれているのは以下の通りです。

・設置費用報告
・増設費用報告
・運転費用報告

上記は10kW未満か以上かで要否が以下の通りに分かれます。

太陽光発電の容量10kW未満 太陽光発電の容量10kW以上
設置費用報告 J-PEC補助金未受給の場合のみ必要 必要
増設費用報告 増設後の容量が10kW以上になる場合のみ必要 必要
運転費用報告 経済産業大臣が認めた場合のみ必要 必要

容量10kW未満の住宅用太陽光発電では一部の場合のみ定期報告が必要ですので、自分の場合必要かどうか必ず確認しておきましょう。

まとめ

太陽光を売電開始するために必要な系統連系について解説してきました。以下、まとめになります。

・系統連系とは発送電設備をはじめ、変電設備、需要設備などを含む発電から消費までを担う電力インフラを発電設備と繋げること
・系統接続には、公平性や透明性を確保するという観点から先着優先ルールがある
・太陽光発電の売電開始に必要な手続きは「事業計画認定申請」「系統連系申請」

系統連系は太陽光発電を売電するのに必須な手続きです。

申請から契約、そして設置工事を間に挟んだ上で系統連系の接続工事を行うため、非常に時間がかかります。

系統連系がスムーズに進まないと、太陽光発電を設置完了して発電がスタートしているにもかかわらず、長期間売電ができないという状況に陥ることもあります。系統連系は計画的に進め、スムーズな売電をスタートさせましょう。

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