太陽光パネルは産業廃棄物!捨てる前にきちんと知識を知っておこう

太陽光発電設備の内、架台やパワコン、接続箱、その他電子機器類等は粗大ごみとなります。しかし、太陽光パネルは一般的に「金属くず」「ガラス・コンクリート・陶磁器くず」「廃プラスチック類」の混合物に該当するため、産業廃棄物として処分しなければいけません。太陽光パネルには鉛やカドミウム、セレンなどの有害物質が含まれているため、適切に処分しなければ環境へ悪影響を及ぼしてしまいます。産業廃棄物は撤去後、排出者が廃棄法に基づいて責任を持って処理する必要があります。排出者とは法律上の「ごみを出す人」のことであり、太陽光発電設備を撤去するときはまず、誰が排出者となるのかがポイントとなります。もし間違えた方法で廃棄してしまうと「不法投棄」となってしまうので注意しましょう。

太陽光をはじめとする再生可能エネルギーを長期的に安定した電力をつくる方法のひとつにするためには、こうした廃棄物問題を避けて通ることはできません。寿命や入れ替えだけでなく、地震などの天災による破損、建物のリフォームや解体など、太陽光パネルを廃棄するタイミングは必ずやってきます。産業廃棄物として処分するためにはどれくらいの費用がかかるのか、またどのような注意点が必要かあらかじめ知っておくといざ廃棄となっても安心して行う事ができるでしょう。今回は太陽光パネルと廃棄について解説します。

太陽光パネルの廃棄費用

太陽光パネルの廃棄にかかる費用は一般的に以下の通りです。

・作業費

・人件費

・足場代

・屋根修復費用

・処分費

・運搬費

「パネルを取り外して屋根から下ろす」作業費用ですが、人件費と込みで10万円ほどかかるでしょう。住宅の屋根に太陽光パネルを設置している場合、撤去に足場を組み、屋根を修復しなければいけません。足場代の相場は1㎡あたり700円~1000円なので、30坪の2階建ての家の場合なら15~20万円ほどでしょう。屋根の修復費は部分補修なら数万円から30万円、葺き替えだと100万円前後になるかもしれません。

処分費は回収・再資源化サービスを行っている専門業者に依頼した場合、単結晶ソーラーパネルの重さ18kg以下だと1枚当たり1,200円ほどで処分してもらえるでしょう。運搬費は処分場までの距離によって異なります。

太陽光パネル廃棄の注意点

太陽光パネルは産業廃棄物ですので、一般の粗大ごみと異なるため注意が必要です。

太陽光パネル廃棄は専門業者に依頼しよう

太陽光パネルは有害物質を含むだけでなく、浸水や破損によって感電する可能性もあります。適切に処理するために撤去や廃棄は個人で行わず、専門業者に依頼するのがいいでしょう。太陽光パネルの種類によって含まれる有害物質が異なるので、取り扱いには専門の知識・技術が必要となってきます。適切に処理できなければ、有害物質が流出し、周囲を汚染する可能性も起こりえます。太陽光発電はCO2削減に繋がるクリーンな再生可能エネルギーですが、正しく処置できなければ重い環境問題に発展する可能性もあるのです。

移動させる際はゴム長靴、ゴム手袋を使う

何かが起こり、持ち主が太陽光パネルを移動させなければいけない場合が発生するかもしれません。その際には厚手のゴム長靴、ゴム手袋、絶縁処理された工具を使用し、細心の注意を怠らないようにしましょう。

破損した場合どこに頼めばいいのか

単に破損しただけなら「不具合・故障で取り替え」と同じですが、太陽光パネルが地上に落下していた場合は太陽光発電の所有者自身が排出者となって廃棄することになります。

完全に屋根から落下した状態の太陽光パネルは産業廃棄物ではなく、法律上は一般廃棄物になります。この場合、廃棄の方法は自治体によって異なるので、わからなければ住んでいる市区町村の廃棄物担当窓口に相談して廃棄方法の指示を受けましょう。ただし、太陽光パネルは粗大ごみなどとして自治体に回収してもらうことはできないため、「使用済み太陽光パネルの回収・再資源化サービス」などを行っている専門業者に処分を依頼することになるでしょう。

天災などで太陽光パネルが破損した場合、一般社団法人太陽光発電協会(JPEA)が公表した「JPEA、破損した太陽光パネルを適正処分できる企業一覧」から適正に処分してくれる企業を選ぶのも方法の一つです。

天災以外で破損した場合、たとえば寿命や故障なら施工会社・販売会社へ、家のリフォームや立て替えなら解体業者に撤去、廃棄を依頼する事ができます。解体業者は設備を撤去後、太陽光パネルについては産業廃棄物の中間処理業者に処分を依頼することになるでしょう。

太陽光パネル廃棄処理の課題

処理数が少ないためコストが高く、設備投資が難しい

太陽光パネル廃棄処理の最大の壁は処理量が少ない事です。

太陽光パネルは強化ガラスと樹脂で太陽電池セルを強固に封止して作られています。そのため、処理するにはそれなりの装置が必要なのですが、現状処理量が少ないため設備投資が難しく、コストがかかってしまいます。

また、太陽光パネルの破棄処理費用は事業者が負担するものですが、状況によっては負担できず放置する可能性もあります。そのため、経産省はパネル処理費用を確実に準備させるために、太陽光発電の運用的報告で廃棄処理費用の準備計画について報告する事を事業者に義務付けました。

放置、不法投棄される可能性がある

建物に設置された太陽光パネルは建物撤去の際に一緒に廃棄され、借地で行われている事業用太陽光発電は借地期間終了時に原状復帰が義務付けられているため、放置される可能性は低いでしょう。

しかし、個人で所有している土地で行われている事業用太陽光は事業が終了していても、廃棄処理にコストがかかるため、有価物としてパネルが放置される可能性があります。それだけでなく、他の土地に不法投棄する可能性も発生します。

こうした放置や不法廃棄を未然に防ぐために、2018年4月に廃棄費用の積み立てが義務化し、10kW未満の住宅用太陽光発電は積み立ては努力義務ですが、10kW以上の事業用太陽光発電設備は積み立て計画と進捗状況の報告を義務化しました。廃棄費用は一般的に資本費の5%であり、FIT法でも資本費の5%を廃棄分の費用として計上し、これを事業者が積み立てる事が決まっています。

しかし、積み立ての水準や時期は事業者に委ねられているため、廃棄費用が適切に積み立てられていないケースもあるため、現在の制度では廃棄費用を確実に確保できないかもしれません。そのため、10kW以上の太陽光発電設備に対して、2022年7月までに売電収入から廃棄費用を源泉徴収して積み立てる、外部積立に移行する事が決定されています。適切に積み立てが行われなければ廃棄費用が捻出できず、不法投棄などが発生するなど、まだまだ課題は山積みと言えるでしょう。

2040年に最終処分場がひっ迫するかもしれない

同時期に設置された太陽光パネルは、20年後同時期に大量廃棄を迎えます。ピーク時には使用済み太陽光パネルの年間排出量が、産業廃棄物の最終処分量の6%におよぶかもしれないと試算されています。

太陽光パネルのリサイクルを低コストで効率よく行い、資源を有効活用すれば、最終処分場のひっ迫問題を緩和できるかもしれません。

太陽光パネルをリサイクル・リユース

使用済み太陽光パネルの排出は本格化していませんが、施工不良や自然災害による破損等により、年間約4,400tもの太陽光パネルが排出されています。環境省は、製品寿命を25年と仮定した場合、2039年には約78万t、産業廃棄物の最終処分量の6%になると推計しています。また、資源エネルギー庁は2035年から2037年頃にピークを迎え、年間約17万tから28万t、産業廃棄物の最終処分量の1.7%から2.7%に相当する量となり、このうち、約3,400tがリユースされ、約1,000tがリサイクル、または処分されると推測しています。

リユースやリサイクルを行う事によって、廃棄による処分場の圧迫軽減や有効資源回収などのメリットが期待され、2018年には環境省がリユースやリサイクルに関するガイドライン見直しを行いました。

太陽光パネルのリサイクル

太陽光パネルのリサイクルは、外側のフレームを外した太陽光パネルをシュレッダーで粉砕し、ふるいをかけ、そこから有用資源を回収します。フレームを外した太陽光パネルから加熱したナイフでカバーガラスとセル/EVAシートを分離し、そこから各種資源を回収する技術もあります。

太陽光パネルのリユース

より発電効率の高い新機種との入れ替えでいらなくなったり、浸水したパワコンに保険が適用され、太陽光パネルも交換するためいらなくなった中古パネルを点検した上で、別の発電施設やオフグリッドにリユースしている事例があります。

まとめ

太陽光パネルと廃棄について解説してきました。以下、まとめです。

・太陽光パネルは産業廃棄物

・太陽光パネルの廃棄処理は個人で行わず、専門業者に依頼しよう

・放置、不法投棄問題を解決するためには事業者がきちんと廃棄できる仕組み作りが必要

太陽光パネルの排気量は産業用FITが満期を迎える2040年頃から急増するでしょう。処理量が増えるとコストの問題は解決されるため、2040年までには技術面や資金面の問題が解決、整理されていくと予測されています。

太陽光パネルの寿命は20年から30年と言われていますが、入れ替えや地震による破損など、寿命の前に廃棄するケースが多々あります。太陽光パネルには様々な有害物質が含まれているので、廃棄する際は専門業者に依頼し、適切な処理を行ってもらうようにしましょう。太陽光パネルの廃棄処理は、ほかの事業とおなじように、発電事業者や解体事業者が責任をもつことが原則です。事業者がきちんと廃棄できるしくみ作りを行えば、太陽光パネル廃棄処理の課題も解決できるかもしれません。

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