2017年4月1日、FIT法が改正され、太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーの申請に必要な4種類のIDが登場しました。IDごとにできることや必要な場面は異なってきます。また、4つのIDの他に、太陽光権利IDというものもあります。今回は太陽光とIDについて解説していきます。
4つのID
太陽光発電のIDは4つあり、それぞれ太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギー申請に必要です。
それぞれのIDについて解説していきます。
登録者ID
1つ目のIDは登録者IDです。
登録者IDとは、固定価格買取制度(FIT)再生可能エネルギー電子申請システムで、各種申請手続きを提出するために必要なIDを指します。
パスワードとセットになっており、電子申請システムでユーザー登録することで、誰でも取得することが可能です。
登録者IDを1つ持っているだけで設置者IDや設備IDの申請手続きを行うことができます。
別の登録者IDに紐づけを変更することができず、設備認定の取得を代行した業者に登録者IDを教えて欲しいと伝えても「他の人の個人情報を見ることができてしまうので教える事はできません」と断られてしまうでしょう。
紐づけとは「この設備IDの手続きを行うのはこの登録者IDです」と2種類のIDを関連付ける仕組みや手続きのことです。登録者IDは、紐づけされている設置者IDが所有している発電設備について、変更認定申請、廃止届などの事業計画認定申請手続きを電子申請システム上で提出することができます。
登録者IDは電子申請システムに個人情報を入力することで入手することができ、忘れてしまった場合も同じ方法で確認することができます。具体的な方法は「みなし認定の移行手続きガイド|20分で完了する事業計画の提出方法」の「3. 『電子申請』に必要な登録者IDの取得 6STEP」をご覧ください。
設置者ID
2つ目のIDは設置者IDです。
設置者IDとは、発電設備設置者に割り振られるIDのことを指します。ログイン時に必要なパスワードとセットになっています。自動計画認定申請時に、設備設置者に対して割り振られます。
登録者IDで提出した申請内容を電子申請システムで確認、承諾または拒否することができます。また、紐づけされている登録者IDを変更することもできます。
しかし、認定申請や変更認定申請などの手続きはできません。
設置者IDを忘れてしまった場合、電子申請システムで必要な情報を入力することで確認することができます。
また、2017年4月1日のFIT改正後に取得した事業計画認定の場合、事業計画認定申請手続き時に届いたメールを確認することができます。それ以前に取得した設備認定の場合、認定取得の手続きを代行した業者に問い合わせましょう。
設置者IDは旧制度と新制度で3つの違いがあります。
違い | 旧制度 | 新制度 |
通知方法 | 申請提出後、一度だけ画面に表示される | 設備設置者にメールで通知 |
パスワード | IDと同時に一度だけ画面に表示 | メールを受け取った後、設備設置者が自分で設定、変更できる |
複数の発電設備を設置する場合 | 発電設備ごとに割り振られる。そのため発電設備ごとに管理が必要になる | ひとつの設置者IDにまとめることができるが、2017年6月25日時点で、すでに発行済の「設置者ID」を統合することはできない |
設備ID
3つ目のIDは設備IDです。
設備IDとは、事業計画認定の取得時に、個別の発電設備に割り振られるIDのことを指します。そのため、みなし認定の移行手続きや変更認定申請を行う時に、どの発電設備について手続きをするのかを判断することができます。
電子申請システム上では、設置者名や設置住所、設備容量などで個別の発電所を判断することができ、入力することもないので、現在のところほぼ使われていません。
設備IDを忘れてしまった場合、認定通知書を見るか、登録者IDまたは設置者IDで電子申請システムへログインし、設備情報を確認しましょう。
申請ID
4つ目のIDは申請IDです。
申請IDは、電子申請システムで提出された申請に対して割り振られるIDのことを指します。これにより、電子申請システムへ提出しているどの申請なのかを判別することが可能です。進捗状況確認や訂正のための差し戻し依頼の際に使用されます。
申請IDを忘れてしまった場合、登録者IDまたは設置者IDで電子申請システムへログインして、申請情報を確認しましょう。
名義変更に必要な手続き
蓄電池を新たに設置するなど、設備を変更するには太陽光発電の「名義変更」が必要となります。
固定価格買取制度(FIT)を利用して太陽光発電システムを設置した場合、経済産業省にシステムの所有者や設備の情報を申請、登録しなければいけません。
また、システム所有者や登録情報が変更になった際は名義変更の申請をしなければならず、「相続」「譲渡」といった2パターンそれぞれで必要となる書類が異なります。
名義変更が完了するまでに必要なステップを解説します。
①設備IDの取得
1つ目のステップは設備IDの取得です。
まず、電力会社に「太陽光発電システムの名義変更をしたいから設備IDを知りたい」と連絡します。後日、電力会社から郵送で「電力受給契約のお知らせ」が送られてくるので、記載されている設備IDを確認しましょう。
②「再生可能エネルギー電子申請ページ」にログインするためのIDとパスワードの取得
2つ目のステップは「再生可能エネルギー電子申請ページ」にログインするためのIDとパスワードを取得することです。
名義変更申請は、再生可能エネルギー電子申請ページにログインしなければいけません。
そのためには、ログインIDとパスワードが必要となります。
相続と譲渡によって、必要な書類が変わってきます。委任状は資源エネルギー庁のWEBサイトよりダウンロードすることができます。
【相続】の場合
・IDとパスワード取得のための、相続する方の住所、名前の記入と実印での押印がされた委任状
・相続する方の印鑑登録証明書
・相続する方の戸籍謄本
【譲渡】の場合
・IDとパスワード取得のための、現在の所有者の印鑑登録証明書と同じ住所、名前の記入と実印での押印がされた委任状
・現在の所有者の印鑑登録証明書
それぞれのパターンで必要な書類と、設備IDによってログインIDとパスワードを取得することができます。書類が揃えば、当日、または翌日に取得することができるでしょう。
名義変更申請
3つ目のステップが名義変更申請です。
相続と譲渡によって必要な書類が異なります。委任状は、資源エネルギー庁のWEBサイトよりダウンロードできます。
【相続】
・変更するための、相続する方の住所、名前の記入と実印での押印がされた委任状
・亡くなられた方の除籍謄本
・附表もしくは住民票の除票
・法定相続人全員の戸籍謄本もしくは法務局が発行した法定相続情報
・相続人全員分の印鑑登録証明書
・遺産分割協議書または相続人全員の同意書(相続証明書)
【譲渡】
・変更のための相続する人の住所、名前の記入と実印での押印がされた委任状
・現在の所有者および新たな所有者両方の印鑑登録証明書
・現在の所有者および新たな所有者両方の住民票
・譲渡証明書
・名義が新たな所有者となっている建物(土地)登記簿謄本
上記が揃えば、「再生可能エネルギー電子申請ページ」より経済産業省へ申請後、約1~2ヵ月ほどで名義変更が完了します。
電力会社に契約変更申請
太陽光発電システムの名義を変更した場合、並行して電力会社に契約変更申請をしなければいけません。申請には現名義人が申請印、新名義人が変更印を押印した「電力受給契約に係る変更申込書」が必要です。変更申込書は電力会社のWEBサイトよりダウンロード可能です。
また、電力会社に変更申込書を提出すれば、振込先口座が変更できます。
太陽光発電権利というID
太陽光には4つのIDの他に、太陽光発電権利というIDがあります。
2017年4月1日、改正FIT法が施行されました。10kW以上の太陽光発電の事業を認定され、太陽光発電権利ID取得から運転開始を3年以内に行わなければ、20年の買取期間が短縮されてしまいます。さらに守らなければいけない項目が増えました。
・長期間である20年間の発電事業計画を定めること
・発電設備の適切な保守点検と維持管理を行うこと
・事業を廃止する際に発電設備を適切に処理することなど
このように、個人の事業者が発電事業へ参入するハードルが上がってしまい、せっかく取得した権利IDを売却する事業者も増えてきています。
取引には複数の仲介業者が介在するため、仲介プロセスが不透明で、必ずしも売却主の意向が反映されない可能性があります。それだけでなく、次の点において売却に手こずる事業者も多いでしょう。
・権利IDの情報が出回る
・成約まで時間がかかる
・高額な所得税を一度に納めなければいけない
太陽光発電権利IDはあるが、銀行からの融資は難しいし、運営できそうにないので売却したい事業者に対して、発電所権利IDが失効する前に一緒に発電所を完成させましょうというプランを提案している太陽光発電投資ファンドもあります。
権利IDを分譲ファンド会社に現物出資すれば、後の費用は市民ファンドによって集めて、最終的に発電所を完成まで持っていく事ができ、その発電所から20年にわたって権利相当の売電収入を受け取ることが可能なプランです。
権利IDを売却してしまうと、発電所を持つことはできませんが、権利IDそのものを現物出資することで、市民ファンドと一緒に発電所を完成させ、間接的に発電所のオーナーになることができます。
つまり、権利IDを現物出資するだけで、費用を支出することなく権利相当の売電収入を20年間手に入れることができます。
まとめ
太陽光とIDについて解説してきました。以下、まとめになります。
・4つのIDは、太陽光発電などの再生可能エネルギー申請に必要
・4つのIDの内、登録者IDは自分で申請取得するものだが、それ以外は割り振られることで取得できる
・権利IDを現物出資することで、費用を支出することなく権利相当の売電収入を20年間手に入れることが可能
太陽光発電設備に必要な4つのIDの中で、登録者IDと設置者IDは混同しやすいかもしれません。
登録者IDは申請手続きの提出を可能にするものであり、設置者IDは申請手続きができる登録者IDとの紐づけを変更可能なものです。
「相続」と「譲渡」によって、必要な書類は変わってきます。そのため、手続きをする際には、どのIDと書類が必要なのかよく確認してから進めるのがいいでしょう。