太陽光とバッテリーの関係性? バッテリーについて色々調べてみた

太陽光発電だけでは、電気を発電できても蓄えることはできません。電気を蓄えるためにはバッテリー(蓄電池)が必要となってきます。固定価格買取制度(FIT)で太陽光発電の普及が始まり、東日本大震災以降、太陽光発電とバッテリー(蓄電池)を組み合わせ非常用電源として準備しておこうという家庭は増えているのではないでしょうか。
バッテリーは、用途に応じた様々な種類のものが販売され、ノートパソコンや携帯電話など、身近な電子機器にも使用されています。今回は太陽光とバッテリーについて解説していきます。

バッテリーとは

バッテリーとは、二次電池のひとつです。電気エネルギーを化学エネルギーに変換して蓄えます。そして必要に応じて蓄えた電気をエネルギーに還元することによって使用できる仕組みを持った蓄電池のことです。充電によって繰り返し使うことが可能であり、2種類の異なった電極と電解液という構造で、電解液中の化学反応によって電気エネルギーを発生させています。

バッテリーの種類

独立蓄電型太陽光発電システムで主に採用されているバッテリーの種類は次の通りです。

鉛蓄電池

1つ目は「鉛蓄電池」です。

鉛蓄電池は、フランスの科学者ガストン・プランテが1859年に発明してから150年余りの歴史を経ていますが、現在も自動車のエンジン始動用をはじめとする多くの用途に使用され続けています。

鉛蓄電池は2種類あります。
・自動車始動用バッテリー
・EB蓄電池(ディープサイクルバッテリー)

自動車始動用バッテリー

鉛蓄電池の1つ目は「自動車始動用バッテリー」です。

自動車始動用バッテリーは、主にエンジン駆動する目的で設計されており、瞬間的な大電流を流しやすい構造になっています。
数ある二次電池の中から鉛蓄電池が自動車始動用バッテリーとして選ばれる理由は以下の通りです。
・エンジン始動時などに求められる、短時間で大電流を放電する性能を持つ
・材料が豊富で容易に確保でき、安価である
・さまざまな環境下で安定した性能を発揮できる
・取り扱い(メンテナンス含む)が容易である
・衝突時などに加わる外力や、異常発生時のリスク(爆発・火災)が低い
・メモリ効果がない

鉛バッテリーはさまざまな環境下で安定した充放電が可能であり、「定期交換」を他の二次電池と比べて低コストで行えるという大きなメリットがあります。

自動車用などに使用されている一般的なバッテリーは、オルタネーター(発電機)により自動車のエンジン運転中は常に充電されながら、ほぼ満充電に近い状態で使用されています。しかし、これらのバッテリーの多くは、長期間の放置による自然放電やライトの消し忘れ等による放電をしてしまった場合、再度充電を行っても蓄電能力が大きく低下してしまいます。そのため、自動車始動用バッテリーは太陽光発電蓄電池としてあまりオススメはできません。

EB蓄電池(ディープサイクルバッテリー)

鉛蓄電池の2つ目は「EB蓄電池(ディープサイクルバッテリー)」です。

EB蓄電池は、自動車始動用バッテリーに比べて電極板が厚く、電動車輌(ゴルフカート、自動搬送機、高所作業車)のように容量がなくなるまで放電しても、充電する事で繰り返し使用する事ができる構造になっています。

EB蓄電池は放電と充電を交互に繰り返して使用される電源として、深い放電にも耐えられるように設計・製作されています。放電しても充電する事で満充電ができ、蓄電能力の低下が微小で、充放電を繰り返し行えるという特徴を持っています。

リン酸鉄リチウムイオンバッテリー

3つ目は「リン酸鉄リチウムイオンバッテリー」です。

リン酸鉄リチウムイオンバッテリーは、酸化鉄を用いるため、分子構造的に安定しており、耐熱性が高いなどの安全性や、環境保護規格にも対応しています。

リン酸鉄リチウムイオンバッテリーは、鉛バッテリーに比べて軽量・大容量・高出力・長寿命であり、結晶構造が強固なため熱安定性が高いという特徴があります。材料は安いのですが、製造コストがやや高いです。活物質の微細化と表面の炭素コートの採用により、電気伝導性が低いという課題は改良されています。

電動バイク、EVカーで主流となっており、価格もだいぶ安価になりつつあるので、蓄電に最適なバッテリーとして定着しています。

酸化鉄リチウムイオンバッテリー

4つ目は「酸化鉄リチウムイオンバッテリー」です。

酸化鉄リチウムイオンバッテリーは、軽量・省スペース・安定した大きな電流という特徴から、電子機器を初めとした車輌・航空機にまでその使用が広がっています。
公称容量値の電流(1C)に対して、5秒程度なら30倍(30C)、長時間でも3~5倍(3C~5C)の放電が可能です。そのため少容量のバッテリーでも大きな起動電流などに対応できます。また、充放電2,000サイクルになっても総蓄電容量の70%以上を維持でき、熱暴走による破損・発火の問題がないため安全性が高いです。
1997年に設立された台湾のCAEC社は、世界で唯一の酸化鉄リチウム正極材特許を持つメーカです。日本でも代理店として販売を開始している所があります。

バッテリーの型

鉛酸バッテリーは用途別にスターティング用か、ディープサイクル用かのいずれかに大別されます。鉛の量、電極を接着し固定する方法、内部電極の絶縁の度合いと構造、ケースの品質、シーリングの材質などの要素において、各タイプにはそれぞれ品質レベルがあり、さらにそれぞれについて以下の3種類のタイプに明確に分類されます。

・電解液浸水型
・ジェル化電解液型
・AGM (吸着ガラスマット)型

独立蓄電型太陽光発電システムで主に採用されているバッテリーは内部構造や材質、電解液の性質によって次のような型になります。

開放型

1つ目は「開放型」です。

バッテリーは化学反応によって電気の放充電を行います。充電する際に、水が分解されて水素ガスが発生するので、ガスを逃がすための通気孔が必要となってきます。充電時の取り扱いが簡単ですが、分解された水がガスとして逃げた分だけ液が減りますので、精製水を補充するための注入口も必要です。また、希硫酸の比重を測定する事で各セルの充電状態がわかります。このようなタイプのバッテリーを開放型と呼びます。

シールド型

2つ目は「半密閉シールド型」です。

シールド型は、水の電気分解を起こりにくくするため、極板を通常の鉛イオンの極板ではなく、鉛とカルシウムとの合金極板を使用しています。バッテリーの充電時に発生するガスを極板に吸収させ、電解液に還元するガス吸収構造なので、バッテリーの寿命まで液面点検や補水の必要のないメンテナンスフリーです。
カルシウム合金極板のおかげで、温度環境が苛酷でなければバッテリーの期待寿命年数まで使用できます。電気抵抗が低いマットセパレータで電解液を保持しているため、激しい振動や揺れによる電解液漏れの心配はありません。

完全密閉シールド型

3つ目は「完全密閉シールド型」です。

完全密閉シールド型は、完全に密閉されているため、液を補充する液栓やバッテリー内のガスを排気する排気口もありません。極板やセパレータに電解液を浸み込ませたり、電解液をゲル化しているため、バッテリー本体を横置きにする事も可能です。

GEL型

4つ目は「GEL型」です。

GEL型は、バッテリー液をジェル状にしたバッテリーです。このバッテリーは、ジェル状バッテリー液をガラス繊維状のスポンジマットに浸み込ませた独自の内部構造という特徴があります。液入り充電済みなので、横置きで搭載しても液漏れの心配がなく、耐震性能が高いことも特徴といえるでしょう。ジェル式なので、電解液の補充は不要です。

AGM型

5つ目は「AGM型」です。

AGM型は既存のバッテリーに対して、安全性、効率、そして耐久性を向上する目的で開発されました。AGMには次のような特徴があります。

・電解液が非常に細かいガラス繊維を幾層にも重ねたフェルト状のマットに吸収されており、絶対に外部へ飛散しない構造であり、補充は不要
・電極板などは電解液に対して、常に「湿った」状態におかれているので、ガスの再合成する効率が上がる
・AGM材は非常に低い電気抵抗となっており、他のタイプのバッテリーと比べ、効率よく電力を供給する
・充放電回数がジェル型の2倍以上ある
・電圧規制により電流制限がない
・正電極プレートが分厚く、充電量0%近くまで放電可能である

鉄系、リチウム系バッテリー

6つ目は「鉄系、リチウム系バッテリー」です。

鉄系、リチウム系バッテリーは、鉛蓄電池のように充電時に水素ガスが発生することはありません。電解液が必要ないので、メンテナンスや場所を気にすることなく自由に設置する事ができます。
鉄系、リチウム系バッテリーの特徴は次のようになります。
・超安定的結晶構造を持つため、他のリチウムイオンバッテリーのように爆発、熱暴走によって発火する心配がない
・-20℃ ~ +65℃ の広範囲な温度環境で放電可能
・鉛蓄電池の3倍以上の重量エネルギー密度
・充放電サイクルが2,000回以上でも70%の電気容量以上を維持
・瞬間ハイレート放電 30C 連続放電でも3C~5Cまで対応可能

バッテリーの選び方

バッテリーは何の目的で、どんな使い方をしたいか「機器消費電力×使用時間」を基本として選ぶのがポイントです。
太陽光発電と組み合わせて非常用電源にする、節電をして家計を助けたいなど、目的が決まったら電子機器などの消費電力や使用時間を調べて、どんなシーンで利用するかシミュレーションしておきましょう。合計消費電力量とバッテリーの容量を比較して、容量に余裕が持てるくらいのバッテリーを選ぶことをオススメします。

まとめ

太陽光とバッテリーについて解説してきました。以下、まとめになります。

・バッテリーは大きく分けて鉛電池とリチウムイオン電池になる
・バッテリーは、電解液浸水型、ジェル化電解液型、AGM (吸着ガラスマット)型に分かれる
・バッテリーを選ぶ時は、容量に余裕が持てるくらいのバッテリーを選ぶ

コストパフォーマンスと合理性を考えると、鉛電池のディープサイクルバッテリー(密閉型、AGM型)を選ぶのがオススメなのかもしれません。太陽光発電とバッテリーを組み合わせてどう使うのかを一度考えてから、バッテリーを選ぶのがいいでしょう。

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