太陽光発電の設置工事において、ソーラーパネルの設置は重要ですが、同じぐらい大事なのが電気工事です。電気工事が成功することで、電気を安全・便利に使えるようになり、電力会社に余剰電力を売電できるようになります。発電した電力を分配、調節してくれる分電盤はトラブルの原因になりやすく、トラブルが起こると停電などで混乱を招きかねません。
分電盤はブレーカーと呼ばれ、太陽光発電に限らず、電力会社から電気を供給してもらっている場合には住宅内に設置されています。住宅だけでなく、ビルや工場など電気を使う場所ならどこにでもあります。今回は太陽光と分電盤について解説します。
分電盤の仕組み
分電盤とは、一般家庭やビルのフロアなどのコンセントや照明などに電気を分配するための装置です。ビルや工場などでは、配電盤で受け電圧を変えられた電気が各フロアにある分電盤へと送られ、そこからさらにさまざまな設備へと送られていきます。一般家庭に送られてきた電気は、各部屋へといくつもの通路(回路)に分けられます。また、電気の分配のほか、使い過ぎや漏電で事故にならないよう、電気をチェックする大切な役目をしています。
分電盤の役割
・家庭内(屋内)の配線へ電気を分ける
・照明や機械、コンセントなど、目的によって電気を分配する
・使い過ぎや漏電などによる事故を防ぐよう、家庭内で使用される電気のチェック
・余った電力を電線に逆流する
分電盤の中身
分電盤には、3つの役割を持った機器が設置されています。これらは金属やプラスチックでできています。
メインブレーカー
1つ目の役割を持った機器は「メインブレーカー」です。
「ブレーカー(breaker)」とは、万が一のトラブルの際に電気の流れを遮断する装置です。過電流や漏電などを防ぎ、火災などの危険を未然に回避することを目的として設置されています。
メインブレーカーは、送られてきた電気を開閉する役割を果たしています。メインブレーカーは配線用の遮断機で、過度に負荷がかかるとショートしてしまいます。電気を使い過ぎると急に停電になるのは、このブレーカーが過電流を教えてくれているからです。
分岐ブレーカー
2つ目の役割を持った機器は「分岐ブレーカー」です。
分岐ブレーカーは、アンペアブレーカーとも呼ばれています。分岐ブレーカーは、一定以上の電気が流れると、自動的に電気が切れるようになっています。電力会社にもよりますが、契約アンペアの大きさによって色分けされており、部屋やフロアごとに配電時に活躍します。例えば、10Aは赤、15Aは茶、20Aは黄などとなっています。
多くの分岐ブレーカーには20A(アンペア)の過電流遮断機あるいは漏電遮断機が設置されており、125%の使用で1時間以内に遮断される仕組みとなっています。
漏電遮断器
3つ目の役割を持った機器は「漏電遮断器」です。
漏電遮断器は、配線用遮断器に漏電が生じたときに自動的に遮断するシステムです。漏電とは、分岐ブレーカーの電流和が規定値を超えることです。漏電による火災や感電事故などを未然に防ぐ役割を担っています。アースへの漏電を検出した際に回路を遮断するという特徴があります。
仕組みとして、電気の量ではなく、漏電を検出したときにブレーカーが落ちるようになっています。メインのスイッチ以外にもテストボタンや復旧ボタンなどがついていることもあります。なお、漏電ブレーカーが落ちると家全体の電気が止まります。
分電盤と配電盤の違い
配電盤に電力会社から送電されてくるのは、高圧の電流です。配電盤はビルや工場のような大きな施設に設備されています。
配電盤の役割
・高圧の電気を施設内の各設備で使えるように適度な電圧に変換すること
・回線を通して各場所に設置された分電盤に分配すること
分電盤と配電盤の違い
・配電盤:高圧受電設備の受電したもとの電気を各場所へ分ける
・分電盤:各機器(コンセント、照明など)へ電気を分け与える
配電盤の種類
配電盤には2つの種類があります。
・開放型
・キュービクル式(閉鎖型)
開放型は、機器を鉄製のフレームに取り付ける必要があり、設置に手間がかかるという難点を抱えていました。
閉鎖型のキュービクル式は必要な機器がおさめられており、安全性が高く主流になりつつあります。メリットとして工場で組み立てを済ませてから据え付けができるうえに、製品の信頼性が高いことが挙げられます。
太陽光と分電盤
太陽光発電設備で設置されている屋内分電盤には、発電した電気を変圧して必要な場所に分配するだけでなく、逆潮流という重要なシステムがあります。逆潮流とは、作った電気を売るために、電線を通して電気を電力会社へと送ることです。逆潮流が分電盤に付いていなければ、せっかく太陽光発電で電気を作り出しても売電することができません。
電気は高い電圧から低い電圧へと流れる性質があります。そのため、電気の引き込み口にかかっている電圧を供給電圧より低くすると受け入れることができます。これを順潮流といい、電力会社から電力を購入する時に使われます。
また、電気を電力会社に送りたい時には、電圧を電力会社の流す電圧より高くしなければいけません。分電盤はこのようなコントロールも自動的に行っています。
太陽光発電と分電盤のトラブル
太陽光発電と分電盤のトラブルの一例を紹介します。
夏場のブレーカー落ち
1つ目のトラブルは「夏場のブレーカー落ち」です。
夏場のブレーカー落ちは太陽光発電の電気トラブルで起こります。
屋外にパワーコンディショナーや分電盤を設置していると、夏場に高温になったときに機器の温度が上昇して稼働停止してしまう可能性があります。太陽光発電システムが停止すると、漏電かもしれないと心配になりますが、実際はパワーコンディショナーの温度上昇による稼働停止という一種の誤作動です。安全面では問題はありませんが、発電や電力の使用が停止してしまいます。
温度が下がると再び起動しますが、その間に発電していた電力を使用できないのは勿体ないです。そのため、パワーコンディショナーなどの機器を設置する場所は高温になりすぎない場所を選びましょう。
しかし、パワーコンディショナーや分電盤はサイズも大きく、設置する場所を選びます。どうしても屋外に取り付けなければいけない場合は、直射日光が当たりにくい場所や急激な温度上昇を避けられる場所にするのがいいでしょう。温度上昇を防げない場所に設置する際は、冷却ファンを取り付けるなどの方法がオススメです。
電力の過剰使用
2つ目のトラブルは「電力の過剰使用」です。
一度に使う電気量が契約容量を超えてしまうと、電力の過剰使用としてブレーカーが落ちるようになっています。これは電力会社から電気を供給されている場合でも起こります。電気の使い過ぎで発生するため、契約している容量の範囲内であればいくら使っても問題はありません。
太陽光発電のブレーカーも電力の容量が決まっています。アンペア数の高い電化製品を同時に使うとブレーカーが落ちやすいといわれています。
容量以内で電気を使っているはずなのにブレーカーが落ちる場合は、機器の設定が間違っている可能性があります。これはメインブレーカーと分岐ブレーカーの設定をするとき、容量を上げようとして分岐ブレーカーのほうだけ大きく設定し、メインブレーカーは少ない容量に設定している可能性があります。
ブレーカーが落ちてしまった後の対処法
ブレーカーが落ちると、すぐに分電盤のスイッチを戻して電気を回復する人が多いでしょう。しかし、これは正しい対処法とはいえません。なぜなら、ブレーカーが落ちたということは何かの異常が発生しているからであり、戻した瞬間に再び過大な電流が流れ、電化製品が故障してしまう可能性があります。正しい対処法は以下の通りです。
①メインブレーカー、漏電遮断器、分岐ブレーカーのスイッチを全てオフにし、コンセントから全てのプラグを外す
②メインブレーカー、漏電遮断器、分岐ブレーカーの順番にスイッチを戻し、電気の流れを戻す
③外したプラグを戻していく
ブレーカーが落ちないための対策
ブレーカーが落ちないための対策として、まず何が原因なのかを探って適切な対策をとるのがいいでしょう。なぜなら、太陽光発電のブレーカーは、正しい設定と使用をしていれば簡単には落ちないからです。
温度や湿度が原因の場合、それに対するメンテナンスを行えばブレーカーは落ちなくなる可能性があります。たとえば、ブレーカーの負荷端子は一番熱を持つ部分なので、そこへ直接風が当たるよう吸気ファンを取り付ける事で、効果的な熱対策を行うことができます。
漏電の場合、定期的な計測を行いましょう。太陽光発電設置業者のメンテナンスとは別に、こまめに自発的なチェックを行ってください。日常的に様子を見ていると、小さな変化に気付けるようになるからです。
トラブルが大きくなると原因究明が難しくなりますが、小さな変化の内に気付けば原因を突き止めることができます。
しかし、中にはシステムのどこかで漏電していたり、漏電していなくてもブレーカーが落ちる場合があります。漏電の原因としてよく挙がるのが、パワーコンディショナーとモジュールのアースを一緒に取っている場合です。太陽光発電導入時に漏電対策の相談はしっかりと行いましょう。
まとめ
太陽光発電と分電盤について解説してきました。以下、まとめになります。
・分電盤とは、電気を分ける機能を持った箱のこと
・分電盤の逆潮流という機能があるから、太陽光発電を売電することができる
・分電盤のトラブルは小まめにチェックし、何が原因なのか考え適切な対策を取る
太陽光発電を導入して電気を使えるようになるまでには、分電盤の役割が重要となってきます。分電盤は、太陽光発電でなくても容量以上の電気を同時に使うとブレーカーが落ちたり、温度や湿度に影響を受けて漏電するリスクがあります。そこから火災などの事故に発展しかねません。トラブルの原因やリスクの可能性を把握して、適切な対策をとりましょう。