太陽光発電やその設置費用は、システム容量にかかわらず年々価格が安くなっています。
とはいえ、住宅用太陽光発電であれば100万円以上、産業用太陽光発電なら1,000万円以上の費用がかかります。太陽光発電の規模が大きければ大きいほど1kWhあたりの価格が安く抑えることができるため、住宅用太陽光発電の設置費用は割高になります。今回は太陽光パネルの価格推移について解説します。
年々低下していく太陽光パネルの価格推移
1993年頃、太陽光発電は住宅用設備で370万円/1kWという価格から始まりました。たとえば4kWの太陽光発電を設置する場合、1,000万円以上になります。そのため、普及は中々進みませんでした。
しかし、1994年に再生エネルギーを普及させたい国が補助金を出すようになり、200万円/1kWまで下がりました。
年々と太陽光パネルの価格は安くなっていき、2006年になると66万円/1kWまで下がりましたが、2006年から2008年に補助金が打ち切られてしまい、設置が伸び悩みます。
しかし、2009年から固定価格買取制度(FIT)と同時に国からの補助金も復活し、ここから急激に太陽光発電は一般家庭に普及し始めたのです。2016年には36万円/1kWが相場となり、この10年でだいたい半額ぐらいまで導入費用が安くなりました。導入費用とは太陽光パネルに加えて他の設備や工事費を含んだ価格からその年の補助金を差し引いた税抜き金額であり、太陽光パネルのみの価格になると大体6割から7割程の値段になります。
太陽光パネルの価格推移のチェックポイント
太陽光パネルの価格推移のチェックポイントを紹介します。
2014年に国からの制度が変わった
1つ目は「2014年に国からの制度が変わった」ことです。
2014年に住宅用太陽光発電に対する国の補助金が排除されました。太陽光発電の導入件数が増加したことから売電単価の構造も変わり、設置容量の多い地域では余剰電力が買い取ってもらえない出力抑制が提示され、出力抑制の無い地域の売電単価は大きく引き下げられました。これにより、2015年から2016年にかけて需要は減り、太陽光発電の価格競争も落ち着きました。
2017年に売電単価が電気料金の単価を下回り始めた
2つ目は「2017年に売電単価が電気料金の単価を下回り始めた」ことです。
2017年あたりから、売電単価が電気料金の単価を下回り始めます。2016年に産業用の売電単価が大きく引き下げられたこともあり、太陽光パネルのメーカーは住宅用に力を入れ始めます。しかし、FIT前と比べてシビアな消費者に売り込まなければいけません。少しでも安くするため、多くのメーカーが生産過程の全て、または一部を海外に移転しています。その結果、日本のブランドでもかなり価格を下げて提供することができるようになっていきました。
太陽光パネルのニーズが減少し、メーカーの変換効率競争が落ち着いた
3つ目は「太陽光パネルのニーズが減少し、メーカーの変換効率競争が落ち着いた」ことです。
売電単価が低くなったため、つくった電力を売るよりも自家消費をした方がお得な状況が増えていきました。そのため、より多くの容量の太陽光パネルを屋根に載せるというニーズが減ってしまい、高効率の製品よりも廉価版に力を入れるというメーカーが増え、太陽光パネルの変換効率競争はかなり落ち着きました。
太陽光発電の価格低下より売電単価の低下の方が速い
4つ目は「太陽光発電の価格低下より売電単価の低下の方が速い」ことです。
2018年から2019年にかけては、売電価格は変動していません。売電単価と比べて太陽光発電の価格低下の方が遅くなってきているため、太陽光パネルを屋根に設置しようと考えている方はできるだけ早く購入し、できる限り作った電力を使い切るようなエネルギー利用計画を立てるのがお得でした。
太陽光発電価格が低下している理由
太陽光発電の価格が低下している理由は次のように考えられます。
・太陽光発電の普及に伴う設備や太陽光パネルの量産
・技術開発による低価格・高品質の太陽光パネル販売
上記の理由が関係し、2021年の価格相場は、住宅用が25万円/1kW、産業用(10kW以上)が20万円/1kW程度になっています。太陽光発電の価格は各メーカーによってバラバラであり、設置する太陽光パネルの枚数によっても価格が変わってきます。そのため、太陽光発電の場合、価格の目安はその年の1kW辺りの価格相場を基準にして考えていくのがおすすめです。
太陽光パネルメーカーの価格比較
少し前まで、安価な国内メーカーとしてシャープや京セラが人気でしたが、近年は安いメーカー=中国メーカーと定義は変わりつつあります。中でもトリナソーラーとインリーソーラーは最安値メーカーとして世界的に高いシェアを誇っています。日本でもトリナソーラーを扱う業者が多くいます。
国内メーカーで最も変換効率が高いと言われているのは、パナソニックです。歴史ある会社のため信頼度が高く、スマート家電などを利用して家をまるごとエコ化できるくらいの技術もあります。価格は高いですが、パネルの出力劣化率が低いなど性能の良さや安心度があり、値引き率も大きいのでお買い得品が手に入るメーカーと言えるでしょう。
国内生産ながら中国メーカーの太陽光パネルに匹敵する安さで販売しているのがソーラーフロンティアです。太陽光パネルは比較的高価なシリコンをパネルの原料にしています。しかし、ソーラーフロンティアはCIS太陽光電池という化合物系パネルを使用することで原料を安く抑える事ができるため、パネル自体の価格を非常に安くすることを可能にしています。
ソーラーフロンティアの太陽光パネルはkW単価が安い上に1kW当たりの発電量が多いことから、より多くの売電収入が見込める国内工場で製造された高品質のパネルといえるでしょう。しかし、同面積に乗せられる容量が限られているため変換効率が悪く、パネルが比較的重く、パネルサイズのバリエーションが一種類しかないというデメリットもあります。しかし、親会社・昭和シェルの高い信頼度を受け継ぐソーラーフロンティアは評価も高く、完全国産パネルにもこだわりをもち、コストパフォーマンスの高さは随一といえるでしょう。
中国製のトリナソーラーは世界的シェアが高く、安いです。安さで選ぶならトリナソーラーに勝る選択肢はなかなかないでしょう。日本では日立もOEMで販売を行うなど着実に実績を伸ばしてきています。
ソーラーパネルの設置など、太陽光発電システムの導入にかかる費用は、メーカーによって変わってきます。取り扱っている部材や機械が異なるためです。メーカーによって大きさや変換効率などが異なるので、価格の安さだけで判断せず、自分の家に何が必要か、優先度を考えながら選ぶと良いでしょう。パナソニックとソーラーフロンティアとトリナソーラーを比較してみました。
パナソニック | ソーラーフロンティア | トリナソーラー | |
製造元 | マレーシア | 国産 | 中国産 |
ソーラーパネル | HIT250αplus | SF185-S | TSM-205DC80.08 |
出力 | 250W | 185W | 205W |
変換効率 | 19.5% | 15.1% | 16.0% |
価格相場 | 24.7万円/1kW | 20.4万円/1kW | 26.4万円/1kW |
小さめ(パネル20枚) | 4.88kW約165万円(利率10.4%) | 3.4kW約98万円(利率11.8%) | 4.1kW約111万円(利率12.8%) |
標準的(パネル30枚) | 7.32kW約244万円(利率10.8%) | 5.1kW約143万円(利率12.6%) | 6.15kW約159万円(利率13.8%) |
大き目(パネル40枚) | 9.76kW約326万円(利率10.9%) | 6.8kW約190万円(利率12.8%) | 8.2kW約213万円(利率13.9%) |
太陽光パネルはkW単価が安いとお得
太陽光発電システムの初期導入費用には、設置費用も含まれています。
・ソーラーパネルやパワーコンディショナーなど太陽光発電に使用する部材代
・足場代などの工事代や人件費
・コーキング材などの諸経費
太陽光発電システムにかかる費用は、設置容量(kW数)が大きければ大きいほど、価格は上がります。そのため、設置費用全体の価格が高くても、kW単価(円/kW)が安ければお得になります。
たとえば3.5kWの発電量を持つ太陽光発電システムを導入したとします。1kWあたり410,000円/1kWと500,000円/1kWとを比較します。
1kWあたり410,000円/1kW×3.5kW=1,435,000円
1kWあたり500,000円/1kW×3.5kW=1,750,000円
差額は315,000円になります。よってkW単価が安い410,000円の方がお得になります。
太陽光パネルの寿命
一般的に太陽光パネルの寿命は約20年といわれています。すぐに劣化するものではないため、長期間に渡って太陽光発電システムを利用できます。もちろん小まめなメンテナンスは必要となってきます。
そして、太陽光パネルもいつかは経年劣化を起こします。太陽光パネルが劣化すると発電効率が悪くなり、発電量自体が減少してしまいます。太陽光パネルがきちんと稼働しなければ、急に電気の給電が停止する事態に陥る可能性もあります。そうならないために、業者に依頼して定期的に点検をしてもらい、発電量監視システムを取り入れ、普段から太陽光パネルの状況を確認しておくことが重要です。メンテナンスは4年に1度、実施することが推奨されています。費用は1回につき10,000~20,000円ほどで、メーカーによっては保証内容に含まれている場合があります。太陽光パネルの寿命が20年と考えると、メンテナンス費用はトータル10万円前後で済みます。
太陽光パネルの法定耐用年数
太陽光パネルの寿命は約20年ですが、法律で定められている耐用年数は17年です。事業向けの設備投資を目的に太陽光発電を導入した場合、購入後17年経過すると費用を減価償却します。また、太陽光発電はグリーン減税が適用されるため、税金対策面でも優遇されています。
しかし、この法定耐用年数は法人や個人事業主が事業用に設置した場合に適用されますが、工場経営者が工事の敷地内に太陽光パネルを設置し、発電した電力を使って工場を稼働させるとなると話はまた別になります。この場合、独立型太陽光発電の法定耐用年数は、輸送用機械器具製造業用設備の9年が適用されます。
まとめ
太陽光パネルの価格推移について解説してきました。以下、まとめになります。
・1993年頃、太陽光発電設備は370万円/1kWから始まり、1994年に国からの補助金開始、2006年になると66万円/1kWまで下がった
・2016年には相場が36万円/1kWとなり、この10年でだいたい半額ぐらいまで導入費用が安くなった
・太陽光発電の価格低下より売電単価の低下の方が速いので、設置を考えている人は早めに行動しよう
太陽光パネル価格はメーカーの努力や太陽光発電の普及により、年々低下しています。売電価格の低下の方が太陽光パネルの価格低下よりも速く進んでいるので、太陽光パネル導入を考えている方は、売電よりも自家消費計画を立てた方がお得になるでしょう。ぜひこの機会に太陽光パネルの導入を考えてみてください。