太陽光発電導入を拡大するノンファーム型接続とは? 再生可能エネルギー導入課題である空き容量不足を解決する!

固定価格買取制度(FIT)が2012年に始まって以来、太陽光発電を中心に再生可能エネルギーが普及し、2010年度から7.9%上昇し、2018年度には16.9%になりました。しかし、目標の2030年度までに再生可能エネルギー比率を22~24%まで拡大するにはまだ届いておらず、さらなる再生エネルギーの導入が必要です。
再生可能エネルギー普及には、現状以上の系統整備が必要不可欠です。
再生可能エネルギー導入には、電力系統の容量不足という課題があります。再生可能エネルギーを導入したくても、電力網の設備である変電所などの能力が不足し、一部のローカル系統では空き容量不足を解消するための増強規模が大きく、発電所を建設できない状況が全国で発生し、電源の効率的導入拡大が困難な状況です。それを解決するのがノンファーム型接続です。今回は太陽光とノンファーム型接続について解説します。

ノンファーム型接続とは

ノンファーム型接続とは、実送電量に応じて空き容量が変化する柔軟な送電ルールのことです。電力系統をより活用するために進められている新しい系統運用ルールの一つであり、「想定潮流の合理化」「N-1電制」と並ぶ「日本版コネクト&マネージ」の具体策の一つです。
海外事例を参考にするなど、経産省を中心に検討が進められています。
送電線の利用ルールなどを見直して既存の系統を最大限活用することで再生エネルギー接続量の増加を目指しています。

従来のファーム型接続では、各発電源に割り振られた送電容量は固定されています。
以前から新たな発電設備の連系を検討する時、接続している電源が全てフル稼働している想定で空き容量を算定して実施されてきました。

しかし、系統内の電力の流れ(潮流)は時間が経つにつれて移り変わるため、たとえ空き容量がゼロと算定されていても、実際の運用容量を常にひっ迫しているわけではありません。空き容量がゼロというのは、流れる電力量がもっとも多いピーク時を想定したときに、空き容量がないということを意味します。

1年間1時間毎の潮流を調べると、細かい時間ごとの潮流においてほとんどの時間に空きがあります。しかし、最も過酷な断面でも送電容量を不足させない決まりがあるため、新たな発電設備を連系することができません。

それを解決するのがノンファーム型接続です。
ノンファーム型接続は、既存電源からの送電を優先し、送電線の送電容量に空きがある時に新たな電源からの送電を行います。
つまり空き容量がない送電線混雑時には出力制御することによって新規接続を合意の上で許容する方式です。

ノンファーム型接続は、基幹系統の空き容量不足が顕著なエリアである千葉エリア(2019年9月から)、北東北エリアと鹿島エリア(2020年1月から)で先行実施されています。今後は、2021年中に全国の空き容量のない基幹系統に展開される見込みです。

ノンファーム型接続で接続契約を行う場合、インターネットを通じてパワーコンディショナーの出力制御をする形式で進むとされています。

増強困難と判定された系統をさらに活用できる

空き容量がない時に出力制限するよりも、系統の増強を行った方がいいと考えるかもしれません。しかし、系統増強は費用も時間も非常にかかるため簡単にはできません。

地域への電力供給を主体的に行う電力系統(ローカル系統)では、工事費負担金制度により一般負担の上限を超えた場合、発電事業者が負担金として増強工事費用の一部を負担して連系しています。

上位の送変電などの設備(基幹系統)の増強は、原則的に送配電事業者の託送料金を通じて、需要家から広く薄く回収する一般負担によって行われ、上限額を超過した場合発電事業者負担となります。

基幹系統増強は、計画・工事期間、工事費用も大きくなるため、「増強困難系統」により難易度を評価した結果、増強工事は現実的ではなく不適切であると判断される場合もあります。
増強困難系統の判断は、各送配電事業者が行うのではなく、中立の電力広域的運営推進機関が行います。
ノンファーム型接続は、電力系統の空き容量を上手く使えば、系統増強に対するコストを最小限に抑えることができるので、増強困難と判定された系統も活用することができます。

メリットオーダー方式が検討されている

ノンファーム型接続は混雑時に制御されることを条件に接続するため、通常の契約で接続する電源より出力制御される可能性が高いです。そのため、ノンファーム型契約の再生可能エネルギー電源が、通常契約の火力発電より出力制御を受けることになりかねません。

太陽光発電などの再生可能エネルギー普及には、現状以上の系統整備が必要不可欠です。再生可能エネルギーは、既存電源に比較して稼働率が低いという特徴があります。
現在の送電線の利用ルールは、接続契約申し込み順に容量を確保する先着優先ルールを適応しています。公平性や透明性を確保するため、太陽光や風力、火力など全電源共通のルールとなっています。接続申込があるにも関わらず空き容量がない場合は、増強工事が必要となります。

こうした問題をクリアするには、送電線の利用ルールの更なる見直しが必要となります。現在、非効率な石炭火力を優先して出力制御できるメリットオーダー方式が検討されています。

メリットオーダー方式とは、先着優先送電ではなく、限界費用順に電源を並べ最安の電気から送電させるという考え方です。
しかし、メリットオーダー式は費用の定義があいまいであり、太陽光、風力、原子力発電などの厳密な限界費用は低く、バイオマス発電は高いです。また個別発電所では送電できるか直前までわからないため発電所のオペレーションが難しく、課題は多いです。

東京電力パワーグリッドの取り組み

東京電力パワーグリッド(東京PG)株式会社は、基幹系統に加え、ローカル系統単位でのノンファーム型接続に試験的に取り組むことを発表しました。
現在、東京PGエリア内の房総系統および鹿島系統、また、東北電力NWエリア内の北東北地域においては暫定接続という形で適用が開始されています。

ノンファーム型接続を試行的に適用する系統について、全国の基幹系統を対象としていましたが、増強か試行ノンファーム導入かを判断する必要があり、判断までに一定の時間が必要でした。
そのため、国が実施している第20回および第21回再生可能エネルギー大量導入・次世代ネットワーク小委員会で、ノンファーム型接続を適用するための課題整理が行われ、全国の空き容量の無い基幹送電線を試行的にノンファーム型接続適用対象とし、2021年1月から受付を開始となりました。
全国展開するノンファーム型接続の適用対象は、空き容量のない基幹送電線であり、ローカル系統への展開は引き続き検討を行います。

系統混雑状況予測には、天気予報の精度が重要になってくる

ノンファーム型接続では、対象となる系統に繋がる電源からの出力と需要の状況を予測した上で、一般送配電事業者が系統混雑の状況を予測し、出力制御のスケジュールを作成します。これらの予測にとって重要なのは天気予報の精度です。市町村単位の天気予報よりも都道府県単位の気象情報の方が当たる確率が高くなるように、天気予報の精度は対象となるエリアの面積が広くなるほど高まる傾向があります。

基幹系統とローカル系統の違い

基幹系統とローカル系統の違いは、天気予報対象エリアの広さです。
たとえば、ノンファーム型接続対象となった基幹系統である鹿島系統(27万5,000V)は千葉県と茨城県にまたがる18市町村が対象と広範囲地域です。しかし、ローカル系統(15万Vや6万V)では市区町村レベルになります。

ローカル系統単位でノンファーム型接続を適用するには、狭いエリアでの天気予測が必要であり、出力や需要を保守的に推定しつつも出力制御量を減らすという考えにおいて、運用上の難易度が上がります。しかし、既存の空き容量がなくなったローカル系統は増えてきています。

この問題を解決するため、東京電力パワーグリッド株式会社は、国と電力広域運営推進機関に試行的なノンファーム型接続実施を提案しました。その結果認定されましたので、実証を通じノウハウを蓄積していく予定だそうです。

配電系統への適用は難しい

配電系統とは、ローカル系統よりもさらに下位となる6,600Vの高圧配電網のことです。配電系統にもノンファーム型接続適用を望む声もありますが、配電系統は何丁目など、対象エリアがさらに狭い範囲となるため、正確に天気予報を当てるのは難しく、ノンファーム型接続運用は非常に難しくなるでしょう。

もうすでにノンファーム型接続を導入している海外では、基幹系統が中心です。そのため、日本でもまずは基幹系統での接続を行い、試行的にローカル系統まで広げ、ノンファーム型接続のノウハウを蓄積していく方針を取るのがいいでしょう。

まとめ

太陽光とノンファーム型接続について解説してきました。以下、まとめになります。

・ノンファーム型接続とは、既存電源からの送電を優先し、送電線の送電容量に空き容量がない送電線混雑時に出力制御することによって新たな電源による接続を許容する方式
・ノンファーム型接続は通常契約で接続する電源より出力制御される可能性が高いため、限界費用順に電源を並べ、最安電気から送電させるメリットオーダー方式が検討されているが、発電所のオペレーションが難しいなど、課題が多い
・系統混雑状況予測をして出力制御スケジュールを作成するには、天気予報の精度が重要になってくる

再生可能エネルギー普及には、以上の系統整備と送電線の利用ルールの更なる見直しが必要です。
ノンファーム型接続は、既存電源からの送電を優先し、送電線混雑時など送電線の送電容量に空き容量がない場合出力制御を行い、新たな電源による接続を許容する柔軟なルールです。電力系統の空き容量を上手く使えば、系統増強に対するコストを最小限に抑えることができるので、増強困難と判定された系統も活用することができます。そのため電力系統の容量不足を解決することでき、ノンファーム型接続が全国に拡大することによって。増々再生エネルギー普及は増大していくでしょう。

関連記事

TOP