太陽光とLCOEとは? LCOEを低減すれば、太陽光発電普及の後押しになる!

固定価格買取制度(FIT)の2021年の太陽光発電買取価格は、10kW未満の住宅用太陽光発電が19円、250kW以上の事業用太陽光発電が10.25円と低減し続けています。そうなると利益確保のために重要となるのがLCOEです。LCOEとは均等化発電原価といい、発電量あたりのコストのことを指します。LCOEは発電効率の良い単結晶モジュールを使うことで低減することができます。今回は太陽光とLOCEについて解説します。

LCOEとは

LCOE(Levelized Cost Of Electricity)とは、発電量あたりにかかるコストを総合的に評価する指標のことです。均等化発電原価、均等化発電コストと言われています。LCOE分析は、プロジェクトの存続期間に渡って分配されるコストを考慮し、1Wあたりのコスト計算よりもシステム運用者が好む非常に正確な財務状況を提供する役割があります。

発電効率が高い単結晶モジュールを使うことで、求められる発電量に対して必要となるソーラーパネルを減らすことができます。周辺機器コストや施工コストを下げ、低照度での発電能力や温度上昇しにくい単結晶を使うことで生涯発電量を押し上げ、トータルコストダウンを図り、LCOE低減を実現します。

LCOEの計算式

LCOEを求める具体的な計算式は以下の通りです。

資本費+運転維持費+燃料費+社会的費用(環境対策費用+事故リスク対応費用+政策経費) ÷ 生涯発電量(kWh)

それぞれの費用の説明は以下の通りです。
・資本費(減価償却費、固定資産税、水利使用量、設備の廃棄費用の合計)
・運転維持費(人件費、修繕費、業務分担金の合計)
・燃料費(単位数量あたりの燃料価格に必要燃料量を乗じた値、原子力の場合は核燃料サイクル費用として別途計算)
・環境対策費用(燃料の使用に伴い排出されるCO2対策に関する費用)
・事故リスク対応費用(発生可能性のある事故に対応するための費用)
・政策経費(税金で賄われる政策経費のうち、発電に必要と考えられる社会的経費)
・生涯発電量(その発電システムが稼働し、数十年後に廃棄されるまでに発電する量)

太陽光発電所で発電される電力の期間は、通常、システムが保証された寿命を指します。 太陽光発電設備を購入し、1kWh当たりの料金を固定することによって上昇する光熱費に対するリスク回避します。

発電に必要なコストと利潤などの合計を生涯発電量で割る事で、1kWhを発電するのに何円かかるのかが明瞭化され、何円で電気を販売すれば収益がでるのかを計算することができます。

たとえば以下の条件の場合、LCOEは3.616円/kWh(5,650,000円÷1,562,500 kWh)になります。
容量:50kW
保証期間:25年
生産量:62,500 kWh /年
総システムコスト:14,125,000円
税務上の利点:-8,475,000円
純費用: 5,650,000円
25年間の生産量:1,562,500 kWh(62,500 kWh×25年)

LCOE削減方法と増加要因

LCOE削減方法は、免税や税額控除などのインセンティブやシステムの位置決めなどです。
生産量を増やし、コスト削減することでLOCEを削減することができます。

逆に、生産量を減らし、コストをあげるものはLCOEを増やす要因になります。
LCOE増加要因は以下の通りです。
・資金調達(ローン提供する金融機関に支払われる利子は、所有コストを増加させる)
・不適切なメンテナンス(システムパフォーマンスは経年劣化し、総kWh出力が減少するので適切なメンテナンスが必要)
・リース(第三者がリースから利益を得ているため、LCOEは高くなる)
・電池(追加の初期投資、最終的な交換、およびメンテナンスの必要性増加により、所有コストが大幅に上昇する)

再生可能エネルギーのLCOEは低下傾向

発電形式ごとのコスト計算について、OECD(Organisation for Economic Co-operation and Development:経済協力開発機構)が試算方法を公開しています。
設備の利用率や廃止費用などの計算法も設定されており、それを用いる事で試算が可能になります。
たとえば2010年の試算による稼働年数と設備利用率、廃止措置費用(建設費に対する比)は以下の通りです。

発電形式 稼働年数 設備利用率 廃止措置費用(建設費に対する比)
石炭火力 40年 85% 5%
天然ガス火力 30年 85% 5%
原子力 60年 85% 15%
水力 80年 国ごとに設定 5%
風力と太陽光 25年 国ごとに設定 5%

技術の発展により、再生可能エネルギーの均等化発電原価は低下傾向にあり、普及の後押しとなっています。

BNEFによる世界の再生エネルギー発電コスト分析

BloombergNEF (BNEF)は、世界の大きな流れの中でビジネスの最前線に立つために必要な、正確かつタイムリーな情報と分析の収集を提供し、顧客が賢明な投資判断を行うための支援を目指しています。BNEFでは、過去6か月で融資を受けた案件、完工または施行中の案件がLCOE調査の対象とし、電源種類別のLCOEを年2回取りまとめています。

BNEF分析によると、世界の再生エネルギー発電コストは年々低下し続けています。
発電コスト低下の理由は設備費の低下です。再生可能エネルギーのコストは、設備投資額、運転維持費、設備利用率、統合費用、送変電費用、税金などで決まります。
太陽光発電と陸上風力発電の設備費は導入量と反比例する形で下落していっています。2010年では、導入量が倍になることで太陽光発電の設備費は28%、陸上風力発電の設備費は11%減少しました。また、設備費の低下だけでなく発電効率や設備利用率の向上といった技術進歩もコスト削減に貢献しています。
しかし、再生可能エネルギーコストが低下しているとはいえ、既存の火力発電のランニングコストよりも高価です。新設の太陽光および風力発電所建設が既存の火力発電に取って代わるという状況はまだ先の話といえるでしょう。

再生可能エネルギーにおける世界と日本

世界の人口の3分の2にあたる国々で、再生エネルギー発電設備は最も安価な発電設備として新規に建設されています。
2010年の陸上風力の発電コストが低下している例は以下の通りです。
・米国、英国など:1MWhあたり50ドルを下回る
・ブラジル:1MWhあたり30ドルを下回る
・中国、インド、豪州:1MWhあたり40ドルを下回る

アジアは北米や欧州とは異なり、再生エネルギーが世界的に最も高価か安価で、二極化しています。具体的な太陽光発電コストの違いの例は、以下のようになります。
・中国、インド、豪州:1MWhあたり40ドルを切る
・日本と韓国:1MWhあたり100ドルを超える

二極化に影響を与えている要因は大規模太陽光発電プロジェクトの平均規模の違いです。

インドは太陽光の導入目標値を2022年3月までに100GW(1億kW)とし、目標のうち60GWを事業用で、40GWをルーフトップで達成するとしています。そのため「ソーラーパーク構想」政策を打ち立てました。
「ソーラーパーク構想」とは、地域によっては100MW規模も認められますが、最低500MW以上、1,000MWまでのウルトラメガ・プロジェクトです。政府が指定した土地で太陽光発電開発事業者が入札を行い、発電された電気は「グリーンコリドー・プロジェクト」で整備される送電網により、地域間を超えて6発電ポテンシャルの高い地域から電力需要の高い地域に送られる計画のことです。許認可プロセスを迅速化し、すでに造成された土地や、基幹送電線への比較的容易なアクセスなどを用意することで、土地取得にかかるリスクを低減し、落札した事業者がすぐに事業に取りかかれるようにしています。可能な限り開発事業者のリスクを低減することで事業安定性が高まり、競争は更なるコスト削減を促します。

日本の2019年の太陽光発電LCOEの指標は1MWhあたり120ドルで、前回調査よりも1.4%減少とコスト減少に伸び悩んでいました。日本のプロジェクトは土地造成費用が高く、融資を行う企業はプロジェクトの建設から運転期間を含めリスクの低さを重視しており、総合建設業者による施行を要求することがあります。
太陽光発電コスト減少を妨げている要因は以下の通りです。
・土地造成費用(山岳地帯では1MWあたり80ドルから100ドル)
・総合建設業者の取るマージン(中小建設会社よりも高く、30%から40%にもなる)
・架台の新規格によるコスト増
・頻発する自然災害による保険料の増加
・電気主任技術者の減少によるメンテンナス費用増大など

太陽光コストを下げる方法の一つとして土地の有効活用が挙げられます。日本の国土面積の約1割は所有者不明の土地です。この土地を発電事業用途に変えていくことで、土地の制限によるリスク削減に繋げることができます。太陽光発電設備自体も年々価格が低下していますが、それでも日本の太陽光発電コストは高く、世界水準に達するには道のりは長いといえるでしょう。

太陽光発電のコスト

太陽光発電のコストは国によって異なります。
スペインやインドネシアでは日射量が多いため、売電用太陽光発電の設備利用率が高くなっています。
日本の年間日射量が約1,200kWh/kWpであるのに対して、スペイン南部は約1,700kWh/kWp、インドネシアは約1,400kWh/kWpとなっています。日本とスペイン南部を比べると、日射量の多いスペインの方が同じ発電設備でも40%程度多くの電気が得られます。

設備の運転期間も日本やインドネシアは20年に対し、欧州は25年となっています。発電所のコストは運転期間に逆比例するので、25年と比べると20年では発電コストが25%高くなります。

日本は発電所の投資額や運転維持費が他国よりも高いので、両者を他国並みに抑え、かつ運転年数を20年から25年に延長すれば欧州と同レベルのkWhコストを得られるかもしれません。

まとめ

太陽光とLCOEについて解説してきました。以下、まとめになります。

・LCOEとは発電量あたりにかかるコストを総合的に評価する指標のこと
・免税や税額控除などのインセンティブなど、生産量を増やし、コスト削減することでLOCE削減に繋がる
・再生可能エネルギーにおいて日本が世界水準に近づくには、主要設備費、設置費、維持運用費を国際標準レベルにまで引き下げた低コスト化の必要がある

LCOEを求める事で、1kWhを発電するのに何円かかるのかが明瞭化され、何円で電気を販売すれば収益がでるのかがわかります。
日本は世界に比べて発電コストが非常に高いなど、太陽光などの再生可能エネルギー普及速度が遅いです。太陽光発電の普及後押しには、技術の発展と太陽光発電のLCOE低減がカギとなるでしょう。

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