住宅用太陽光発電はFIT(固定価格買取制度)により売電価格が高額だったため、売電収入によって初期費用を回収しようというイメージでした。しかし、売電価格は年々下がっていっており、高額な初期費用を取り返せるか不安が広がっています。今回は太陽光発電を導入した場合の経済的なメリットがあるのかを解説します。
太陽光発電は今が買い時
FIT(固定価格買取制度)とは、太陽光発電等再生可能エネルギーで発電された電気を電力会社が買い取るときに決められた価格制度のことです。一般家庭の太陽光発電の場合、10年間売電することができます。2009年は1kWあたり48円だったのですが、2021年には1kW19円と売電価格は年々下がっています。
そう聞くと、今太陽光発電を導入するとデメリットしかないのではないかと感じてしまうでしょう。しかし、高額な初期費用の悩みを解消できる今こそが買い時といえます。そのメリットを紹介します。
太陽光導入費用が安くなってきている
1つ目は「太陽光導入費用が安くなってきている」ことです。
FITが定める売電価格は、基本として初期費用を回収できるように設定されています。つまり、売電価格が下がるということは太陽光発電の初期費用が安くなったということです。
国は毎年、太陽光発電の導入費用の推移を計測しながら、投資回収期間が変わらないようにFITの買取価格を決めています。
10年前だろうと今だろうと投資回収期間に大きな差はないといえるため、初期費用が高額すぎて断念していた家庭にも太陽光発電導入のチャンスといえるでしょう。
太陽光発電システムの初期費用には、太陽光パネルやパワーコンディショナー(パワコン)などの機器を購入する費用と設置工事費用が含まれます。
屋根に載せる太陽光パネルとその電気を調整するパワコンの組み合わせで、発電できる出力(kW)が決定されます。一般住宅の平均は4.5kWくらいです。
設置費用が高いか安いかは、1kWあたり何円かかるかというkW単価の比較で決まります。
太陽光発電のkW単価の相場は、2011年では1kWあたり46.8万円でしたが、2021年には15万円前後にまで低下しています。
この設置費用を4.5kWの海外メーカーの太陽光発電で比較した場合、以下のようになります。
年 | 式 | 差額 |
2011年 | 4.5kW×46.8万円=210.6万円 | |
2021年 | 4.5kW×15.0万円=67.5万円 | 143.1万円 |
安くなった理由
太陽光発電が安くなった理由は以下の通りです。
・世界的に発電システムが低価格化した
・工事の技術が進歩し低コスト化に成功した
・製品の技術が上がり工事単価の低コスト化に成功
脱炭素化を目指す世界中で太陽光発電が普及したことで、発電システムの大量生産による低価格化が進んだからです。また、1枚の太陽光パネルの出力や発電効率は年々増加し、設置工事の効率を上げる事によって設置費用も下がりました。
小さい屋根でも発電できるようになった
2つ目は「小さい屋根でも発電できるようになった」ことです。
発電効率技術が上がると、少ないパネルの枚数でたくさん発電できます。そのため、屋根に載せられる太陽光パネルが少なくても、最新の太陽光発電なら十分な電気を生み出せる可能性があります。さらに、低価格の海外メーカーの発電効率と耐久性が国産太陽パネルとほぼ同じくらいの効率で発電できるようになりました。太陽光発電の品質が上がることにより、安く、大量に発電でき、長持ちになりました。そのことが売電価格が下がってもメリットになる理由となります。
自家消費して電気代を節約
太陽光発電を自宅で作ることを自家発電、その電気を自宅で使うことを自家消費といいます。自家消費は自家発電したものを家庭内で使いきれなかった場合、電力会社がFIT価格で買い取るため、電気代を節約することができます。
電気代は年々上がっているので、電気代節約は売電収入と合わせて太陽光発電の大きな経済的メリットといえるでしょう。
ただし、FIT期間(10年間)が過ぎると売電価格は大幅に安くなります。
2009年に太陽光発電の余剰売電を始めた場合、1kWhの電気を10年間42円で売っていましたが、FIT期間が終了(卒FIT)すると同じ1kWhの電気が7~9円まで下がってしまうのです。
電力会社から買電価格は大抵27円くらいですが、太陽光発電だと0円です。太陽光で発電した電気を売るときの価格が27円よりも安いなら、使ったほうがお得です。そのため、卒FIT後は売電するよりも自家消費した方が家計的に助かり、経済的メリットといえるでしょう。
再エネ賦課金に効果あり
毎月の電気料金には再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)が入っています。
再エネ賦課金とは、日本の再エネを普及拡大する事を目的に、日本で電気を使う全員が支出している費用です。脱炭素化を目指すことにより、太陽光発電再エネ賦課金は2030年まで負担が増加し続けると予想されており、国民負担は毎年上昇しています。
年 | 再エネ賦課金 | 年間増加金額 |
2019年 | 2,95円/kWh | +0,05円 |
2020年 | 2,98円/kWh | +0.03円 |
2021年 | 3,36円/kWh | +0.38円 |
2030年予想 | 6円~8円/kWh |
たとえば、月々の電気料金が15,000円の場合以下のようになります。
月の電気料金:15,000円
再エネ賦課金:電気料金の10%上乗せ
毎月の再エネ賦課金:1,500円
年間の再エネ賦課金:18,000円
2021年は特にコロナ終息につれて各国経済が回復に動き出し、電気をつくるために必要な原油やLNG、石炭などの燃料取りあいにより価格が大きく高騰することで燃料費調整単価も上がり、電気料金の値上げラッシュとなっています。
太陽光発電は電気料金が0円であり、蓄電池に余剰電力を貯めておけば自由なタイミングで使うことができるため、夜や天候が悪くても太陽光発電の安い電気を使うことができます。
2019年以降、ダブル発電が可能となったため、夜間電気料金が安い時に蓄電池に電気を蓄電して、昼間にその電気を利用することで太陽光発電の売電量を限りなく増やすことができます。そのため、太陽光発電と蓄電池の組み合わせは電気代節約だけでなく、売電収入を増やすことにもなります。
工事費は施工業者によって価格が異なる
太陽光発電は多くのメーカーから製品が発売されており、価格も様々です。太陽光発電を設置する時に、製品自体の価格だけでなく工事費用もかかります。工事費用は施工業者によって異なり、太陽光発電システムは住宅環境などの諸条件に合わせて設置します。そのため、製品だけで価格を判断することができません。
また、太陽光発電の発電量は太陽光パネルの枚数や性能以外に天候や周辺環境の影響を受けます。初期費用が安いからといって発電量が少ないものを選ぶよりも、容量が大きい方がお得なことがあります。初期費用だけでなく、発電量を詳しくシミュレーションすることで、自分にとってお得かどうか判断することができます。
太陽光発電の工事費には、太陽光パネルだけでなくパワーコンディショナー、発電量モニターなどの周辺機器の設置費用も含まれます。施工業者は工事費を含めた全体の費用から、メーカーカタログに記載されている太陽光発電の定価からそれぞれの項目を値引きしてくれます。
費用を相場よりもあまりに低く見積もりを出す業者には要注意です。安さにつられてすぐに依頼してしまうと、工事費や周辺機器などが加算されて後から見積もりより高額な費用を請求される可能性があるからです。
2021年の太陽光発電の設置費用相場は1kWあたり16万円前後でした。2011年は46.8万円でしたので、かなり値下がりしていることがわかります。たとえば4.5kWの太陽光発電の場合、79.2万円ですので、2011年と比べると100万円以上も安くなっています。
太陽光発電の費用内訳は施工業者によって異なりますので、相見積もりを行い比較するようにしましょう。
太陽光発電導入シミュレーション
・設置容量:4kW
・システム単価:15万円/kW
・年間発電量:4,846kWh(経年劣化を含む)
・電気料金単価:26円
・売電できる電力量:4,119.1kWh(4,846kWh(年間発電量)×85%)(15%が自家消費)
・FIT価格:19円
以上の設定で太陽発電導入シミュレーションを行います。
15万円/kW×4kW=600,000円+消費税10%=660,000円(本体価格)
4,119.1kWh×19円=78,262.9円(年間売電収入)
78,252.9円×10年間=782,529円(10年間の売電収入)
4,846kWh×15%×26円=18,899.4円(年間電気代節約金額)
18,899.4円×10年間=188,994円(10年間の電気代節約金額)
660,000円-782,529円-188,994円=-311,523円(太陽光発電の10年間トータル収支)
660,000円÷(78,262.9円+18,899.4円)=約6.8年
2021年時点では約6.8年(FIT期間内)で初期投資を回収でき、10年間で約31万円収入が増えるという結果になりました。
設置費用を少しでも抑えたい場合は、国や自治体が出している補助金制度に申し込んでみましょう。
売電収入をさらに増やしたい場合、日中に電気を極力使わず、余剰売電するために電気を余らせましょう。
節約したい場合は、夜間に電気がお得で昼間の電気が高いプランに乗り換えるか、太陽光発電している間に多くの電気を使うようにしましょう。
まとめ
太陽光発電を導入した場合の経済的なメリットはあるのかを解説してきました。以下まとめになります。
・太陽光発電システムの導入費用は年々安くなってきているから今がオススメ
・初期費用には本体価格だけでなく工事費用もかかり、工事費用は業者によって価格が異なる
・FITは初期費用を回収できるように設定されているが、よりお得にするには補助金活用や節電など工夫も必要
太陽光発電で最も重要なのは売電収入ではなく、設置費用も加味された10年間のトータル収支です。そのため、太陽光発電で初期費用を回収するには、設置費用を安くすることと設置後の電気の使い方が鍵となります。国や自治体から出ている補助金制度を利用したり、相見積もりを行って安い業者を探し出すことで設置費用は10万円から100万円以上の差が生まれるでしょう。太陽光発電の導入費用は5年前と比べ約半額まで下がっています。今が太陽光発電を設置する経済的メリットが一番大きいといえるでしょう。ぜひこの機会に太陽光発電設置を検討してみてはいかがでしょうか。