固定価格買取制度(FIT)開始時は40円/kWhだった売電価格は年々下がってきており、2021年度は19円/kWhまで下がりました。売電価格が下がり続けるようでは太陽光ビジネスに今後はないと諦めてしまう方もいるかもしれません。しかし、太陽光ビジネスはまだまだ儲けることができるビジネスであり、2021年からはFIP制度が導入されます。この記事では太陽光ビジネスの今後について解説しています。

太陽光ビジネスの今後はどうなる? 年々下がる売電価格に2021年導入開始のFIP制度の光

2012年に40円/kWhだった売電価格が年々下がっていることから、これから太陽光発電投資ビジネスを始めても利益はでないかもしれないと危惧する方は少なくありません。

太陽光発電投資をする場合、一般的には産業用の50kW以上の太陽光発電システムを購入するので、おおよそ1,000〜2,000万円の費用がかかり、100万円台から始められる住宅用太陽光発電とは桁の違う初期投資になります。

しかし、FIT制度開始時期よりも初期費用が抑えられるようになり、システムの能力も向上していることから、kW単位での利益にさほど差はありません。FIT制度開始時から太陽光発電は「10年で初期費用を回収し、残り10年で利益を出す」と言われており、それは売電価格が下がった今でも同じ事がいえるでしょう。今後、太陽光発電ビジネスはどのようになっていくのでしょうか。今回は太陽光発電ビジネスの将来について解説します。

固定価格買取制度(FIT)

固定価格買取制度(FIT)とは、経済産業省が再生可能エネルギーの普及を目的に「太陽光」「風力」「水力」「地熱」「バイオマス」の5つに対して、10年後までの安定的な収益を保証した制度です。

2009年に制度化された太陽光発電の余剰電力買取制度は1kWhあたり約48円でした。これは売電が制度化される以前の約2倍となる売電価格です。3年後の2012年、再生可能エネルギーの固定価格買取制度における売電価格は40円+税と定められました。

また、太陽光発電の余剰買取制度では申請した年から10年後まで、全量買取制度では申請した年から20年後までは(売電価格に変動がない)固定価格での買取を義務化しています。この固定価格は、経済産業省が売電価格を年ごとに定めています。

年々下がっていく売電価格

2019年度、固定価格買取制度(FIT)による事業用太陽光の買取価格と入札上限価格が14円/kWhまで下がりました。FIT制度の開始時である2012年は40円だったのに対し、売電価格は年々下がっています。経済産業省資源エネルギー庁による、2021年度の事業用太陽光発電の売電価格は次の通りです。

10kW未満:19円/kWh(10年間)

10kW以上50kW未満:12円/kWh(20年間)

50kW以上250kW未満:11円/kWh(20年間)

10kW未満は余剰買取制度のルールで売電できます。2019年度まで10kW以上は「余剰買取制度」か「全量買取制度」のどちらかを選択することができました。しかし2020年度以降「余剰買取制度」のみとなりました。

また、一定以上の自家消費比率が必要ですので、自家消費が難しい土地などへ10kW以上の太陽光発電は設置できません。

経済産業省は太陽光発電の売電価格の目標数値は2025年度に、2009年度当初に比べ4分の1以下である、11円まで値下げすると発表しています。

売電価格が年々下がっていく理由は、大きくわけて2つあります。

国民負担が増加しているから

1つ目は、国民負担が増加していることです。

電力会社が太陽光発電による電気を買い取る際にかかる費用は、「再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)」として電気代を支払うすべての国民が賄っています。しかし、再生可能エネルギーの普及が進むにつれて、太陽光発電システム設置による売電収益源の再エネ賦課金はかなり増加し、経済産業省資源エネルギー庁によると、2020年度の総額は2.4兆円となっています。これが国民の負担となっているため、政府はこれ以上国民に負荷をかけないために、固定買取価格を毎年見直しています。

設備費用の低価格化が進んでいるから

2つ目は、設備費用の低価格化が進んでいる事です。

売電価格が下落していくのと同じ様に、太陽光パネルの価格も下落していってるため、固定買取価格が下落していても利益は出るようになっています。

 2011年2020年
売電価格48円/kWh21円/kWh
機器の導入費用50万円/kw23万円/kW

つまり、いつ購入しても、約8年~10年で設置費用の回収が可能な金額となるように、設置費用と売電価格が調整されているのです。

また、産業用太陽光発電におけるシステム費用も、2012年に43万円だったものが、2015年には32万5000円まで値下がりしています。

ただ、太陽光発電システムを早く設置するほうが、後で設置するよりも収益が早く受けられ、そのぶん他の投資や必要な物の購入が早くできます。時期を待って機器費用を安く買う考え方は良いのですが、それに連動して売電価格は下がっていき、投資利回りはほとんど変わらないため、経済的メリットを考えると早期投資早期収益の方がよいでしょう。

政府は今後FIP制度を推進していくため、設備費用と売電収益の損益がプラスマイナスゼロになるような価格で調整を進めていくのではないでしょうか。

FITの目的

電力を一定期間、同じ価格で買い取るFITの目的は2つです。

・太陽光発電システム導入

・普及と導入拡大に伴うコストダウン

目的はある程度達成され、電気料金から一律に国民から徴収している再エネ賦課金の負担が大きい事から、2019年4月、資源エネルギー庁は2020年度末までにFITの抜本的見直しが必要であると発表しました。

さらに、市場ベースの買取価格(FIP)や、自ら売電先と契約して発電計画を作成する仕組みが固まってきています。FIT卒後の政策支援の枠組みは、発電所を作って連系すれば売電できるという型に比べ、幅広い知識やノウハウが必要となってくるでしょう。

これからの太陽光開発事業者が取るべき手法


FITからFIPへの移行は2021年度から始まっており、野立て型全量売電への政策支援は2019年度認定分で打ち切られました。そのため、ビジネス開発事業者は自家消費型を開発しつつ、野立ての全量売電型の次なる開発手法を練っていかねばなりません。考えられる開発手法は次の通りです。

・大規模案件の「FIP売電」

・政策支援に頼らずに企業に売電する「コーポレートPPA(電力購入契約)」

・小規模案件を「地域活用電源」仕様にして「自家消費率30%以上」と停電時の自立運転機能を要件にFITで余剰売電

動き出す事を強いられる低圧太陽光発電事業者

低圧太陽光開発事業者は、投資家を募り、50kW未満の小規模太陽光を全国的に開発し、事業用太陽光の認定容量ベースで約3割、件数ベースでは約9割を占めていました。

しかし、2019年度から50kW未満の低圧電力の全量売電は新たにFITの認定を受けられず、自家消費または余剰売電のみに単価は適用されることになりました。

経産省がFIT期間後の継続性や運用上の信頼性を危惧したため、2020年度の支援はなしと決断しました。そのため、2019年度までの認定案件を完工してしまえば、新たな案件はなくなってしまうので、自家消費型や高圧へのシフトチェンジなど、次のビジネスモデルに動き出す必要に迫られています。

ただし、これから低圧太陽光投資ビジネスを始める場合、過去の買取価格で売電が行える方法が2つあります。

・FIT認定済で未稼働の物件

・FIT認定済で、すでに稼働している中古の物件

FIT認定が済んでいれば、その年の価格で売電をすることが可能です。太陽光発電設備は稼働時の売電価格が20年適用されるので、中古の太陽光発電設備をいま購入したとしても、発電した電気は稼働開始時点の売電価格で売ることができます。売電価格の下落によって収支計画を左右されたくないという、太陽光物件投資家にとって中古太陽光発電はオススメだといえるでしょう。

例えば2014年に稼働開始した太陽光発電物件を購入した場合、売電価格は32円となります。ただし、物件の持ち主が変わったからといって適用年数が書き換えられるわけではありません。2014年に稼働開始した場合、2034年までしか固定価格で売電することはできません。つまり、2021年に購入した場合13年間しか売電できないという事になりますのでご注意ください。

2021年度から導入が始まるFIPとは

FIP(フィード・イン・プレミアム)とは、発電した電気を市場で販売した場合、特別割増金(プレミアム)が上乗せされる制度のことです。

FITが再生可能エネルギーの普及促進やシステム設置者の初期費用回収をサポートする事を目的にしているのに対して、FIPは再生可能エネルギーの自立促進、売電の完全自由競争化を目的としています。

売電方法もFITは電力会社と直接行いますが、FIPは各発電事業者が参加する電気卸市場にて行います。また、売電額もFITは国が定めた価格から一定期間変動なしなのに対し、FIPは市場価格によって変動し、売電が国に上乗せされる割増金は「固定型」、「上下限ありの変動型」、「上下限なしの変動型」の3パターンがあります。そのため、収益が変化しやすいため、シミュレーションをしづらいという難点があります。

FIPはFITよりもさらに先を見据えた、より革新的な制度であり、太陽光発電システム運用者にとってよりよい環境で売電できる制度だといえるでしょう。

まとめ

太陽光ビジネスが今度どうなっていくかを解説しました。以下、まとめになります。

・FITによる売電価格は年々下がってきていて、2025年度の目標値は11円まで下がる

・FIT適用物件の場合、黒字利益回収ができるとされている

・新しく導入されるFIPはよりよい環境で売電できる制度

地球環境の観点から考えて太陽光発電は今後も必要な再生可能エネルギーであり、FIT適用物件であれば初期費用を回収し、その後も黒字にすることができるため、まだまだ新規参入しても儲ける事ができるビジネスだといえるでしょう。2020年度からFIT制度は改革されていき、2021年からはFIP制度が導入され始めます。FIP制度は収益が変化しやすいため、シミュレーションをしづらいという難点がありますが、制度が浸透していけば再生可能エネルギーの自立化が促進されることによって、売電の完全自由競争が始まり、太陽光ビジネスは今後増々発展し、広がっていくでしょう。

太陽光ビジネスを今後も続けるためには、どんどん新しくなっていく制度や仕組みを理解し、投資し続ける事が重要です。ぜひこの機会に太陽光発電投資を実行してみてはいかがでしょうか。

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