脱炭素社会を目指すため、再生可能エネルギーを電力とした太陽光発電の普及は進みつつあり、実際導入している家庭も少なくありません。しかし、太陽光発電設備は設置後、経年劣化により雨漏りが発生する可能性があります。
対策をしていないと太陽光発電設備が故障してしまい、よけいに費用がかかってしまいます。そうならないためには、太陽光発電設置前の時点で原因や対策を知っておく必要があります。今回は太陽光発電設置後に雨漏りが発生する原因と対策について解説します。
太陽光発電設備の雨漏り原因とは
せっかく太陽光発電設備を設置したのに数年後雨漏りが発生するのなら、太陽光発電設置はやめておこうかと不安になる方もいらっしゃるでしょう。しかし、太陽光発電設備の雨漏り原因を知り、事前にしっかりと対策を立てることでその不安は解決できます。太陽光発電設備の主な雨漏り原因は以下のとおりです。
太陽光パネルを取り付ける際、屋根に穴をあけるから
1つ目は「太陽光パネルを取り付ける際、屋根に穴をあけるから」です。
太陽光パネルは、雨や雪でずり落ちないように金具を使ってしっかりと屋根に固定します。一般的な太陽光パネル取付の過程は以下の通りです。
- 垂木(棟から軒に渡してある木)の上に野地板を張る
- 野地板の上に防水シート(雨水を防ぐためのシート)をかぶせる
- 防水シートの上に瓦やスレートなどの屋根材を敷く
- 屋根材と防水シートに穴を開け、パネルをビスで垂木にとめる「直打ち工法」で太陽光パネルを屋根に設置
この時穴は塞ぎますが、老朽化すると穴と金具との間に隙間が生まれ、雨漏りを引き起こす原因となる可能性が高くなります。
取り付けてはいけない場所に設置しているから
2つ目は「取り付けてはいけない場所に設置しているから」です。
屋根には雨が降った時に雨水を下に流す「谷」と呼ばれる場所があります。そこは水が溜まりやすく、家の中に水が侵入しやすい場所でもあります。
なので、たくさん電力を得るために太陽光パネルを一枚でも多く取り付けようとここに太陽光パネルを設置すると、経年劣化により隙間が生まれた穴と金具との間から浸水し、雨漏りの原因となります。
業者の技術力不足と知識不足による施工不良問題
3つ目は「業者の技術力不足と知識不足による施工不良問題」です。
太陽光発電設備の雨漏りが発生する原因は、業者の技術力不足による施工不良問題です。
- 太陽光パネルの設置時に瓦が割れていた
- コーキングがしっかりできていないので浸水が防げていない
- ビスが野地板を貫通しているなど
また、技術不足だけでなく、以下のように費用を安く抑えようとして雨漏りの原因になる可能性もあります。
- 作業工程の簡略化
- 材料費を抑えようと耐久性の低いコーキング材を使用するなど
さらに、現在屋根材には粘土系の瓦屋根だけでなく、セメント系やスレート系など、さまざまな種類が存在します。なので、施工技術はあっても太陽光パネルを屋根に取り付けるのに最適な屋根の構造や屋根材、設置のしやすさなどに対する知識が不足している業者によって雨漏り問題が発生する場合があります。
たとえば、バラ板は板の形にバラツキがあり経年すると隙間ができるので、ストレート屋根の野地板にバラ板を使用した場合、その隙間にビスが入っても固定できません。ストレート屋根にだけビスが止まっている状態なので緩みやすくなり、基本的に太陽光発電設備は設置できず、その隙間が雨漏りの原因となります。
傾斜をつけずに太陽光パネルを設置すると雨水や葉などがたまるので発電量が低下するなど、そういった必要な知識不足業者に当たると太陽光発電設備の雨漏り原因へとつながっていくので要注意です。
料金が相場よりも安すぎる業者は技術不足であったり、知識不足だったりするので、手抜き工事をする可能性があるため、料金の安さだけで業者を選ぶのではなく、実績や口コミなどしっかり調べてから選びましょう。
太陽光発電設備の設置による雨漏りトラブルを回避するための事前対策
太陽光発電設備の設置により雨漏りが発生すると、以下のようなトラブルが発生します。
- 雨水が家の中に侵入して柱が腐る
- 壁にカビが生えるなど
一度トラブルになると、太陽光パネルだけでなく、家までダメージを受けてしまいます。そのため、トラブルを回避するためには信頼できる太陽光パネル取付業者を選ぶなどの事前対策が重要となります。
屋根の穴を開けずに設置できる工法を選ぶ
太陽光パネル設置には穴を空けずに取り付ける「キャッチ工法」というものがあります。キャッチ工法とは、専用の取り付け金具で屋根材を挟み、ボルトでその金具に太陽光パネルを固定する工法です。以下のような特徴があります。
- ガルバリウム鋼板などの金属屋根のみ可能
- 費用が高くなる
- 屋根が老朽化していれば塗装工事や葺き替えが必要になる場合があるなど
キャッチ工法の手順は以下のとおりです。
- 金具の取り付け位置を決定
- 屋根材をキャッチ金具で挟み、ボルトでしっかり固定する
- キャッチ金具にフレームを取り付け、高さを微調節して太陽光パネルを美しく並べる
- 固定金具でパネルを取り付ける
このように、屋根材を金具でしっかり挟んでパネルを固定することで穴をあける必要性がないので、屋根の穴による雨漏りの心配がなくなるといえるでしょう。
ガルバリウム鋼板の特徴
ガルバリウム鋼板とは、芯材である鋼板にアルミ・亜鉛・シリコンなどで両面加工した金属屋根材です。従来、金属屋根材はトタン板が主流でした。トタン板の特徴は以下のとおりです。
- 非常に軽く安価
- 耐久性が低くて劣化しやすくサビが発生する
- 劣化がひどくなると雨漏りが起こる
- 遮音性や断熱性も低いのでこまめなメンテナンスが必要など
ガルバリウム鋼板はトタン板のメリットを持ち、かつデメリットが改善された素材として注目されています。ガルバリウム鋼板の主な特徴は以下のとおりです。
非常に軽い
1つ目は「非常に軽く安全性と耐久性が高い素材」であることです。
日本国内で多く普及されている屋根材の中で、ガルバリウム鋼板は非常に薄く、最も軽い部類です。瓦屋根と比べると8分の1から9分の1程度しかありません。なので、地震などが発生しても軽微な損傷で住むなど、安全性が高い素材といえるでしょう。
また、金属をメッキ加工しているのでサビにくく、細かい傷はつきやすいですが強度が高いため耐久性が高いです。トタン板と同じく防音性や断熱性は低いですが、工法を工夫したり仕上げの屋根材などを追加したりすることで改善できます。
非常に安価で加工がしやすく耐用年数が長い
2つ目は「非常に安価で加工がしやすく耐用年数が長い」ことです。
ガルバリウム鋼板はトタン板のようなメリットを持つだけでなく、瓦に比べて非常に安価なので人気があります。金属なので非常に加工がしやすく、様々なデザインやカラーバリエーションに対応できます。
また、ガルバリウム鋼板の塗装は10年程度で劣化してしまいますが、耐用年数は30年程度あります。トタン屋根の耐用年数が10年から15年程度なので、非常に長く使うことができます。
太陽光パネル設置がしやすく雨漏りリスク回避の可能性が高くなる
3つ目は「太陽光パネル設置がしやすく雨漏りリスク回避の可能性が高くなる」ことです。
太陽光発電は屋根の種類によって施工のしやすさが変わるため、それに応じて費用も変動します。
ガルバリウム鋼板は、瓦屋根やスレート屋根に比べて非常に安価で軽いなどの特徴があるため、費用を安く抑えて工事をおこなうことが可能です。屋根が軽ければそれだけ屋根への負担を気にせずに太陽光パネルを設置できるので、乗せられる枚数が増え、より多くの発電量を期待できるでしょう。
また、ガルバリウム鋼板は屋根に穴をあけないキャッチ工法を適用できるので、雨漏りリスクも回避する可能性が高くなります。
定期的にメンテナンスが必要
4つ目は「定期的にメンテナンスが必要」なことです。
非常にメリットが多いガルバリウム鋼板ですが、どんなに優秀な素材でも経年劣化は避けられません。そのため太陽光発電設備を設置する前に、以下のように「屋根診断」を施工業者にしっかりと行ってもらいましょう。屋根診断を受ける際、いつメンテナンスをおこなうのか、いつ太陽光パネルを設置するのかなど、施工のタイミングもあらかじめ検討しておきましょう。
- ガルバリウム鋼板の耐用年数や家の築年数などを含めて屋根の形状を見てサビはないか、効率を上げる方角に障害物、影になるようなものがないか確認
- 屋根の傾斜を見て屋根に足場が必要か、工事車両の出入り可能か確認
- より正確な発電量を算出するために、太陽光パネルの設置可能な条件が揃っているか現場の確認・実寸と目視面積測定が必要となる
- 屋根材の種類と素材、野地板や防水下地がボロボロになっていないかなどを確認
- 劣化が進み過ぎているため補修よりも葺き替えリフォームなどを行うのか
- 全てを確認した上でキャッチ工法は可能なのか
太陽光発電設備設置前に屋根を診断してもらう理由
太陽光発電設備設置前に屋根を診断してもらう理由は以下のとおりです。
問題が発覚して値段が上がってもキャンセルできない
1つ目は「問題が発覚して値段が上がってもキャンセルできない」からです。
太陽光発電設置には工事開始から完了まで様々な機械や工事が必要なので、設置後に屋根のメンテナンスを行うのは大変です。その間に問題が発覚すると追加費用が発生する場合があり、金額が見積金額と異なっているから「キャンセル」したいと言ってもできず、業者と依頼者の間でトラブルになってしまいます。
正確な見積もり金額が算出できない
2つ目は「正確な見積もり金額が算出できない」からです。
屋根が老朽化しているのに無視をして取り付けた場合、太陽光パネルや屋根の耐久性が悪化してしまいます。
また、屋根を診断しなければ設置に最適な場所と工法がわからず、発電量最大化や設置コスト最小化の正確な計算ができません。そうならないよう最初に詳しく屋根などの調査を行い、できるかぎり正確な見積金額を算出します。
まとめ
太陽光発電設置後に雨漏りが発生する原因と対策について解説してきました。以下まとめになります。
- 太陽光パネル設置後、雨漏りをする原因は「屋根に穴があいているから」「取り付けてはいけない場所に設置しているから」「業者の技術力不足と知識不足による施工不良問題」です
- 太陽光設備設置による雨漏りを回避するには、施工業者の見極めと穴をあけないで太陽光パネルが屋根に設置できるキャッチ工法が可能なガルバリウム鋼板などの屋根材かの確認などの診断を施工業者にしっかりと行ってもらう
- 施工後はキャンセルできず屋根のメンテナンスも難しいので、施工業者にしっかりと屋根診断をしてもらい、正確な見積金額を算出してもらう
太陽光発電設備は安い買い物ではありません。それなのに施工不良が原因で雨漏りが発生し、家ごと傷んでしまう事態は避けたいです。雨漏りの主な原因は設置時に屋根へ穴をあけるからなので、穴をあけないキャッチ工法が可能な屋根材かどうかなど、施工業者にしっかりと屋根の状態確認と診断をしてもらいましょう。太陽光発電設備導入を考えている方は、この機会に自宅の屋根診断を検討してみてはいかがでしょうか。