太陽光発電を初期費用0円で設置する仕組みとは?設置相場を上回ればお得!

災害などによる長期間の大停電時、電気があるとないとでは便利さだけでなく安心感も異なってきます。非常事態に備え、停電しても太陽光で電気を作り出す家庭用太陽光発電を設置する場合、約100万円以上200万円程かかります。太陽光発電設置は初期費用が高く、その後のメンテナンス費用などもあり、気軽に導入できるものではありません。しかし、事業者と契約することで、初期費用0円で太陽光発電システムを自宅の屋根に搭載できる「0円ソーラー」という仕組みがあります。何故0円で設置可能なのでしょうか。今回は初期費用0円で太陽光発電を設置できる「0円ソーラー」の仕組みについて解説します。

0円ソーラーとは

0円ソーラーとは、事業者がソーラーパネル設置の初期費用を負担し、住宅に太陽光発電設備を無料設置してくれるサービスです。

0円で太陽光発電システム設置可能な仕組みの大前提

0円ソーラーの主な仕組みは以下の通りです。

  1. 太陽光発電システムの所有者である事業者が、住宅所有者である契約者の自宅屋根に、設置費やパネル代金、メンテナンス費用など全て事業者が負担し、初期費用0円で太陽光発電システムを設置する
  2. 事業者は太陽光発電システムが作り出した電力をそのまま住民に売電することで、通常よりも比較的割安な電力プランを用意でき、月々電力使用料金と住民が使用しなかった余剰電力を地元の電力会社に売電することで契約期間中に設置費用を回収していく
  3. 契約期間終了後は無償で契約者が太陽光発電システムを譲り受けるため、0円で太陽光発電システムを手に入れることができる

つまり、事業者は、太陽光発電システムが作り出した電力を、一定期間住宅所有者である契約者に販売することで設置費用を回収し、回収後は契約者が無償で譲り受けるので「0円ソーラー」になります。これが「0円ソーラー」の仕組みの大前提になります。

0円ソーラーが設置できる3つの仕組み

大前提を踏まえた上で、0円ソーラーには以下のような3つの仕組みがあります。

電力販売(PPAタイプ)

電力販売とは、太陽光発電システムの所有者である事業者が住宅に設置し、住宅所有者である契約者がその電気を購入して使用するという仕組みです。このプランは、0円ソーラーの仕組みの中でも最も主要であり、事業者と契約者はwin-win関係といえるでしょう。

電力販売のメリット

  • 0円で太陽光発電システムを設置した時から、契約者は普段契約している電力会社の電気料金よりも10~15%割安で利用できる
  • メンテナンス費用などの費用も全て事業者負担
  • 10年の売電契約期間終了後、太陽光発電システムは契約者(住宅所有者)のものになり、実費で太陽光発電システムを設置した時と同様の恩恵を受けることが可能

電力販売のデメリット

  • 太陽光発電システムの所有者は事業者なので、余剰電力の売電収入は得られない
  • 投資目的には向かない
  • 電気売買契約なので、蓄電池設置・併用が禁止になっている事業者が多い

屋根借り

屋根借りとは、太陽光発電システムの所有者である事業者に、住宅所有者である契約者が屋根を貸す際に賃料を受け取る仕組みです。太陽光発電システムの目的が売電収入よりも自家消費にシフトしてきている近年ではあまりオススメとはいえないでしょう。

屋根借りのメリット

  • 屋根の賃料収入が年間1~3万円程度見込める
  • 借家住まいでも利用できる

屋根借りのデメリット

  • 太陽光発電システムも発電した電力も全て事業者のもの
  • 契約期間が終了しても太陽光発電システムは契約者のものにならない
  • 賃料が年間1万円から3万円程度しかない
  • 契約期間中に実費で太陽光発電システムを購入し設置したいとしても、屋根を貸しているためできない

リース

リースは、太陽光発電システムの所有者である事業者に、住宅所有者である契約者がリース代を支払うことで、発電された電気の所有権を借りる仕組みです。リース代は月額制であり、太陽光発電システムの大きさや発電率などにより金額が異なります。

リースのメリット

  • 自家発電を利用した場合と同様の電気代削減費と売電収入が得られる
  • 売電収入を投資に回すこともできる
  • 発電電力は契約者のものなので、蓄電池を活用すればリース代を割安に抑えられる
  • 契約期間は10年であり、契約終了後の太陽光発電システムは契約者のものになる

リースのデメリット

    • 毎月リース代を支払う必要がある
    • 日照時間や時期などによって、リースの月額料金が電気代削減費と売電収入を上回るとマイナス費用になる可能性がある
    • FIT(固定価格買取制度)の売電価格が年々下がってきている

0円ソーラーのデメリット

プランごとにメリットやデメリットが異なりますが、全体的に通じる0円ソーラーのデメリットは以下の通りです。

0円ソーラーの利用条件が厳しい

0円ソーラーは事業者によって利用条件は異なりますが、多くの場合以下のような設置条件が組み込まれています。

  • 年齢制限:事業者ごとに非常に幅広く、50歳未満から70歳未満
  • 築年数制限:電力販売かリースかによって異なりますがかなり広範囲であり、10年未満から40年未満
  • 安定的な太陽光発電可能な住宅:北面以外の屋根がある、改定建築基準法を満たしているなど
  • 蓄電池設備の有無:事業者によっては蓄電池設備設置・併用を禁止しているなど

事業者によって条件が非常に細かい

太陽光発電システムが作り出す電気は気候条件や設置家屋の日照条件に左右され、事業者に安定した初期設置費用の回収が期待できないため、事業者によっては上記以外にも非常に細かい諸条件が設定されています。

仕組みによっても条件が異なる

どの仕組みを選ぶかによっても違いがあり、リースよりも電力販売の方が厳しく設定されています。何故なら、電力販売は電電気の売買契約であり、発電量により電気量が一定しないため、リースのように毎月決まった金額が見込めるわけではないからです。

また、電力販売は契約期間中に中途解約する場合、太陽光発電システムを買い取らなければいけません。太陽光発電システムの買取価格は利用年数に応じて変動するため、自己保有で契約するよりも最終的な金額が高くなる可能性があります。

パワーコンディショナーの耐久年数が短い

太陽光発電システムには、太陽光発電システムで作った電気を家庭用に変換するパワーコンディショナー(パワコン)が含まれます。

0円ソーラーは設備のメンテナンスなども事業者負担なので、契約期間である10年間は問題なく稼働するかもしれませんが、ソーラーパネルの寿命は大体20年から30年もあります。それに対してパワーコンディショナーの耐久年数は15年なので、ソーラーパネルの半分程度です。そのため、ソーラーパネルは10年後無償譲渡されても問題はなさそうですが、パワーコンディショナーは交換する必要が出てくるでしょう。

また、交換せずにいたとしてもパワコンは最も故障が多い箇所なので、無償譲渡後にパワコンのメンテナンスに出費がかかる可能性が高いです。

手に入るのは約10年後

0円ソーラーは、プランによって10年の契約期間が終了すると、太陽光発電設備を無償譲渡されます。しかし、家庭用太陽光発電システムのFIT期間は10年間なので終了しており、FIT期間時のような安定的な売電価格が得られるわけではありません。

また、無償譲渡後は太陽光発電システムの定期的なメンテナンス費用、交換費用だけでなく、廃棄費用(約15万円)も、全て自分が出さなければいけません。

そのため、既存住宅の場合自分で購入した方が、太陽光発電システムで作った電力を完全自家発電自家消費することが可能となるので、電気代削減などに貢献できるだけでなく売電することもでき、お得といえるでしょう。

途中解約すると買い取り費用が発生する

0円ソーラーは契約期間中に途中解約すると、太陽光発電システムの買い取り費用が発生します。買い取り費用は契約の経過年数によって異なります。そのため、契約前に以下の事を確認しておきましょう。

  • 買取費用の金額
  • 解約の条件内容
  • 引っ越しをする場合、次の移住者に引継ぎ可能かどうか

 

0円ソーラーと購入はどっちがお得?

0円ソーラーと購入を比較すると以下のようになります。

費用や権利 購入の場合 0円ソーラーの場合
設置費用 負担あり 負担なし
発電システム所有権 契約者(住宅所有者) タイプによる
電気所有権 契約者 タイプによる
メンテナンス費用 契約者が負担 事業者が負担

 住宅用太陽光発電は、システム容量10kW未満という決まりがあり、太陽光パネルを設置する屋根面積や費用面などの関係で、システム容量3~5kWの太陽光発電が主流となっています。日本では、太陽光発電システム容量1kWあたりで年間約1,000kWhの発電量とする場合が多いです。

たとえば、3kW(発電量3,000kWh、10年間で30,000kWh)、5kW(発電量5,000kWh、10年間で50,000kWh)の太陽光発電システムがあったとします。自家消費量30%、売電量70%であり、2022年度のFIT売電価格が17円/kWh、買電単価は27円/kWhの場合。

【3kWの太陽光発電システム】

  • 30,000kWh×70%=21,000kWh
  • 21,000kWh×17円=357,000円
  • 30,000kWh×30%=9,000kWh
  • 9,000kWh×27円/kWh=243,000円
  • 357,000円+243,000円=600,000

【5kWの太陽光発電システム】

  • 50,000kWh×70%=35,000kWh
  • 35,000kWh×17円=595,000円
  • 50,000kWh×30%=15,000kWh
  • 15,000kWh×27円/kWh=405,000円
  • 595,000円+405,000円=1,000,000円

売買電した金額を足し、設置費用相場よりも安くなければ0円ソーラーはお得といえるでしょう。

2022年の住宅用太陽光発電の設置費用は、1kW当たり20万~30万円が相場なので3kWの場合60万~90万円、5kWの場合100万~150万円となります。

なので、例に挙げた太陽光発電システムの場合、2022年に0円ソーラー利用と自分で購入するのとでは同じくらいの利益が得られるといえるでしょう。

0円ソーラーの最大のメリットは、初期費用0円で設置できることです。0円ソーラーはこんな人にオススメです。

  • 太陽光発電システムを導入したくても、とにかく現金がない
  • ソーラーローンも組めない
  • ソーラーローンは組めるけど借入したくない
  • 初期費用と面倒なメンテナンス費にお金を支払いたくない

また、新築一戸建てで太陽光発電設備設置を検討している場合、0円ソーラーを利用することで住宅ローンとの予算取り合いが起こらないためお得であるといえるでしょう。

まとめ

何故初期費用0円で太陽光発電を設置できるのか、「0円ソーラー」の仕組みやデメリットなどについて解説してきました。以下まとめになります。

  • 0円ソーラーは初期費用0円で自宅の屋根に太陽光発電システムを設置できるが、太陽光発電システムや売電権利の所有者は事業者なので、リース代や電気使用料金など、お金が発生する
  • 選択した仕組みによって契約終了後、太陽光発電システムを無償譲渡してもらえるが、10年以上経っているため、メンテナンス費用や交換費用、廃棄費用など全て自分で払わなければいけないなど、デメリットが多い
  • 売買電した金額の合計が、設置費用相場よりも高ければ0円ソーラーはお得

「0円ソーラー」という言葉はとても魅力的に響きますが、メリットもあれば様々なデメリットがあります。タダほど怖いものはないと昔から言うように、初期費用無料で自宅屋根に太陽光発電システムを設置できるだけで、契約期間終了後まで太陽光発電システムも太陽光発電によって作り出された電気も自分のものにならず、使用するのにお金が発生します。それでも0円ソーラーを利用してみたいと思った場合、デメリットをよく理解した上で、売電収益と設置費用相場を比較し、検討してみましょう。

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