農地に太陽光発電設備を設置する場合、農地に土を入れて高くしたり、平らに整地したりしなければいけません。その場合、開発許可が必要であり、許可には多くの提出書類が求められ、自分自身で申請するのはかなりの困難になるでしょう。そのため、多くの場合は業者に依頼していますが、業者に依頼するとなるとお金がかかります。太陽光発電設備設置に開発許可は必要なのでしょうか。今回は太陽光と開発許可について解説します。
開発行為とは
開発行為とは、土地の区画形質のことです。区画形質の変更を行う主な目的は建築物の建築、または特定工作物建築です。そのため、主な利用目的が建築物または建築物の特定工作物に係るものではないと認められた場合、土地の区画形質変更は開発行為に該当しません。
区画とは、土地などをいくつかの部分に区切ることです。
区画形質は大きく以下の通りに分けられます。
・区画の変更:道路や排水路などを新設・廃止・移動することにより、土地の「区画」を変更すること
・形の変更:切土(きりど)や盛土をして「形」を変更すること
・質の変更:農地や雑種地、山林など宅地以外の土地を宅地にすること
開発許可とは
開発許可とは1968年に制定された都市計画法(第29条)で定められている、宅地造成などを行う場合に必要な許可のことです。市街化区域や市街化調整区域内のうち、都市計画が定められている区域内で一定以上の面積で開発行為を行う時に必要な許可となります。
開発行為を行う人は、開発行為を始める前に知事や市長に申請して許可を受けなければいけません。許可が必要な面積は、原則として1,000平方メートル以上です。
そのため、土地の形状の変更に該当しても、各自治体によって基準が異なるため、一定の規模以下のものは開発行為にならない場合があります。例えば、愛知県の場合、30センチ未満の土地の切盛は開発行為に該当しません。
太陽光発電施設は開発許可が必要?
太陽光発電設備は原則として建築物・特定工作物に該当しないので、開発許可は不要です。
・都市計画法(開発許可制度):太陽光発電設備及びその附属施設が建築基準法第2条第1項に定める建築物でない場合、開発許可は不要(市街化調整区域内においても同様)
・宅地造成等規制法:太陽光発電施設用地等も「宅地」として扱われるので、宅地造成工事規制区域内において造成を行う場合、宅地造成等規制法第3条第1項の同法第8条の許可が必要
土地に自立して設置する太陽光発電設備の場合、同法第2条第1号に規定する建築物に該当しません。
・太陽光発電設備自体のメンテナンス時以外、架台下の空間に人が立ち入っていないもの
・架台下の空間を屋内的用途(居住、執務、作業、集会、娯楽、物品の保管又は格納など)
たとえば、農地に太陽光設備を設置する場合、ソーラーパネルは低い位置に設置されるためメンテナンス時以外にパネルの架台下に人が入って作業することがないため、開発許可は必要ありません。
また、建築基準法上の建築物ではない太陽光発電施設の付属施設は、ソーラーパネルだけを設置するわけではありません。
太陽光によって発電した電気を家庭用電気に変換するパワーコンディショナ、発電設備から送電線につなぐ送電設備、発電した電気量を計る電量計などがあります。
発電設備規模が大きくなるほど、付属設備も大きいものが必要となります。特にパワーコンディショナを収納する物置のようなコンテナが必要となり、そのコンテナが建築物に該当する可能性があります。
パワーコンディショナを収納する専用コンテナに係る建築基準法の取り扱いについて、国土交通省は以下の条件を満たすものは建築物に該当しないものとしました。
・パワーコンディショナとしての機能を果たすために必要となる最小限の空間のみを内部に有している
・稼働時は無人
・機器の重大な障害発生時等を除いて内部に人が立ち入らない
ただし、複数積み重ねる場合など、必要以上に大きなコンテナになると建築物に該当する可能性があります。判断が難しいため、事前にコンテナ図面や仕様書を持って市役所の都市計画課で確認しておきましょう。
太陽光発電設備と林地開発許可
2012年7月に固定価格買取制度が創設されて以来、太陽光発電施設の設置目的の林地開発許可等の案件が増加しています。太陽光発電施設の設置を目的とした開発には、切土、盛土をほとんど行わなくても現地形に沿った設置が可能であるなど、他の開発目的とは異なる特殊性が見受けられます。
このため、地域森林計画の対象森林において、1ヘクタールを超える規模で太陽光発電設備を設置しようとする場合は、事前に森林法第10条の2に基づく林地開発許可を受けなければいけません。
立木の伐採のみで土地の改変を伴わない場合であっても、当該設備の設置によって土地の形状又は性質を復元できない状態にするおそれがあるため許可が必要となります。
太陽光発電設備と林地開発許可に関して、太陽光発電施設の設置を目的とした開発行為の許可基準の運用細則が定められました。
運用細則の内容は以下の通りです。
事業終了後の措置について(運用基準第1の4関係事項)
1つ目は「事業終了後の措置について」です。
事業終了後の措置については、太陽光発電施設に係る開発区域が太陽光発電事業終了後に原状回復等したときに、当該区域の地域森林計画対象森林への再編入を検討することをあらかじめ考慮して行うものとされています。
この措置が行われる条件は以下の通りです。
・太陽光発電事業終了後の土地利用の計画が立てられている場合
・かつ太陽光発電事業終了後に開発区域について原状回復等の事後措置を行うこととしている場合
上記の条件を満たした場合、林地開発許可を行う際に以下の事を行わなければいけません。
・植栽等、設備撤去後に必要な措置を講ずることについて、申請者に対して指導
・土地所有者との間で締結する当該土地使用に関する契約に、太陽光発電事業終了後、原状回復等する旨を盛り込むことを申請者に対して促す
自然斜面への設置について(運用基準第2の1関係事項)
2つ目は「自然斜面への設置について」です。
運用基準第2の1の規定に基づき、以下のことが明らかであることを原則としています。
・開発行為が原則として現地形に沿って行われること
・開発行為による土砂の移動量が必要最小限度であること
その上で、太陽光発電施設を自然斜面に設置する区域の平均傾斜度が30度以上である場合、以下の通りにした上で擁壁(ようへき)又は排水施設等の防災施設を確実に設置します。
・土砂の流出又は崩壊その他の災害防止の観点から、可能な限り森林土壌を残す
・太陽光発電施設を設置する自然斜面の森林土壌に、崩壊の危険性の高い不安定な層がある場合、その層を排除する
・自然斜面の平均傾斜度が30度未満の場合、土砂の流出又は崩壊その他の災害防止の観点から、必要に応じて設置するかどうか適切な判断をする
排水施設の能力及び構造等について(運用基準第2の6関係事項)
3つ目は「自然斜面への設置について」です。
太陽光発電施設には、太陽光パネルの表面が平滑で一定の斜度があり雨水が集まりやすいなどの特性があります。そのため、雨水等の排水施設の断面及び構造等について以下のように、太陽光パネルから直接地表に落下する雨水などの影響を考慮し、対策を行う必要があります。
・地表が太陽光パネル等の不浸透性の材料で覆われる箇所は、排水施設の計画に用いる雨水流出量の算出に用いる流出係数を0.9から1.0まで
・排水施設の構造に関して、表面流を安全に下流へ流下させるための排水施設の設置等の適切な対策
・表面浸食に関して、地表を流下する表面流を分散させるために必要な柵工、筋工等の適切な措置
・または、地表を保護するために必要な伏工等による植生の導入や物理的な被覆の適切な措置
残置し、若しくは造成する森林又は緑地について(運用基準第5の1関係事項)
4つ目は「残置し、若しくは造成する森林又は緑地について」です。
開発行為の目的が太陽光発電施設の設置である場合、開発行為をしようとする森林の区域に残置、もしくは造成する森林又は緑地の面積の、事業区域内の森林面積に対する割合及び森林の配置等などは以下の通りです。
・森林率はおおむね25%以上
・残置森林率はおおむね15%以上
・原則として周辺部に残置森林を配置
・尾根部については、原則として残置森林を配置
・開発行為に係る1か所当たりの面積はおおむね20ヘクタール以下
・事業区域内に複数造成する場合は、その間に幅おおむね30メートル以上の残置森林又は造成森林を配置
残置森林又は造成森林は、善良に維持管理されることが明らかであることが許可基準です。当該林地開発許可審査時には林地開発許可後に採光を確保すること等を目的として残置森林又は造成森林を過度に伐採しないために、あらかじめ樹高や造成後の樹木の成長を考慮した残置森林又は造成森林及び太陽光パネルの配置計画が必要になります。
その他の配慮事項
4つ目は「その他の配慮事項」です。
太陽光発電施設設置を目的とした開発行為に関して配慮すべきその他の事項は以下の通りです。
・防災や景観の観点から、採光を確保する目的で事業区域に隣接する森林の伐採を要求する申請者と地域住民との間でトラブルが発生する事案が多い
・申請者は、林地開発許可の申請の前に住民説明会の実施など、地域住民の理解を得るための取組を実施することが望ましい
・太陽光発電施設の設置が目的の開発行為をしようとする森林の区域が、市街地、主要道路等からの良好な景観の維持に相当の悪影響を及ぼす位置にあると、適切な措置をしたとしても景観の維持への配慮が求められる場合がある
・景観維持への配慮のため、申請者は太陽光パネルやフレーム等について地域の景観になじむ色彩等にするよう配慮することが望ましい
まとめ
太陽光と開発許可について解説しました。以下、まとめになります。
・太陽光発電設備は原則として建築物・特定工作物に該当しないので、開発許可は不要
・発電設備に必要な附属設備が建築物に該当してしまうと、土地の造成が開発行為に該当し、開発許可が必要
・1ヘクタールを超える規模で太陽光発電設備を設置しようとする場合、事前に森林法第10条の2に基づく林地開発許可が必要
太陽光発電設備は原則として開発許可は不要です。しかし、発電設備に必要な附属設備が建築物に該当してしまうと、土地の造成が開発行為に該当し、開発許可が必要となります。該当判断は各自治体によって基準が異なるため、切土や盛土の程度により開発行為に該当しない場合があります。また、1ヘクタールを超える太陽光発電設備を設置する場合、林地開発許可が必要となります。それぞれの該当条件や許可の運用細則をよく理解した上で、太陽光発電設備を設置するかどうか考えましょう。