設置場所がなくても自家消費型太陽光発電実現可能!CO2排出量削減にも繋がる自己託送とは

2019年まで、太陽光発電はFITによる売電収益を目的とした設置が主流でした。しかし、2020年のFIT法改定により、10~50kW未満の低圧区分の太陽光発電による全量売電は事実上廃止されてしまいました。更に電力会社へ売却できる価格は下がっていき、逆に電力会社から購入する電気料金単価は年々高くなっています。そのため、太陽光発電で作った電気を売電するのではなく、自社内で消費した方が経済的メリットは大きく得られるようになりました。2020年を節目に事業所の電気代削減や停電対策として太陽光発電導入を検討した企業は多かったのではないでしょうか。しかし、太陽光発電を導入するには事業所の屋根や敷地内の空きスペースなど、500平方m以上のスペースと太陽光パネルの重さに耐えられる建物が必要となってきます。また、塩害地域で自家消費型太陽光発電の設置が厳しいなど適切な設置環境も条件に入ってきます。このような条件で導入を断念する企業にオススメだと言えるのが自己託送です。自己託送とは一体何なのか、メリットデメリットを解説していきます。

自己託送とは

自己託送とは、送配電事業者の送配電設備を利用することで、自家消費型太陽光発電の設置が難しい塩害地域や、自家消費型太陽光発電を設置できるスペースがない場合でも、遠隔地の太陽光発電所から事業所まで電気を送電する仕組みの事です。

通常、自家消費型太陽光発電を導入する場合と異なり、屋根に設置する必要はありません。そのため建物の耐久度や屋根の広さ、いびつさなど関係なく事業所で再生可能エネルギーを使用することができます。つまり、自社屋根や空き地のスペースを確保することが不可能な企業においても「自己託送」を利用することにより、発電所で発電した電気を自家消費することができるのです。

発電設備と事業所を一般電気事業者が保有する送配電ネットワークを通して電力を送電でき、電力会社へ余剰売電を行わないので、逆潮流対策も必要なく、特別な工事も不要です。

系統に繋がっていれば、発電設備から電力を複数の遠隔地で使用できるので、グループ企業全体間の再生可能エネルギーを使用する事が可能となっています。

自己託送の利用条件

自己託送を利用するには3つの条件があります。

①売電目的の太陽光発電設備(電気事業用電気工作物)ではないこと

②契約者と発電者、電力の供給先が同じ会社の施設であること

③同じグループ企業の施設など、密接な関係があること

「発電所名義」と「需要場所名義」が同じ、もしくはグループ会社であることが証明できれば、一般送配電事業者(東京電力など)が運用する電線などの送配電を介して、発電所で発電した電気を消費場所にて使用することが可能になります。

売電目的の太陽光発電設備や発電元と送電先の関係性がまったく無関係の企業の場合、自己託送は利用できません。

自己託送のメリット

自己託送による太陽光発電導入のメリットは2つです。

①企業グループ全体でのCO2削減

②企業グループ全体で電気代削減ができる

①企業グループ全体でのCO2削減

太陽光発電は、火力発電に比べて二酸化炭素の排出量が少ない発電方法です。自家消費型太陽光発電と自己託送制度を組み合わせることで、企業全体またはグループ企業全体の二酸化炭素(CO2)排出量の削減が期待でき、温対法(地球温暖化対策の推進に関する法律)対策にもなります。

近年、「パリ協定」「SDGs」「RE100」など環境問題への取り組みが推進されています。投資家の中にも企業のESGを判断指標として捉えて、優先的に投資するESG投資と呼ばれる投資手法があります。自己託送を行っている企業はCO2削減に貢献している企業であると投資家に良いイメージを与え、投資に繋がるかもしれません。消費者に対しても、クリーンなブランドイメージを持たせる効果が期待できるでしょう。

②企業グループ全体で電気代削減ができる

太陽光発電で作った電気を自家消費することで、電力会社から購入電力を減らすことが可能です。また、再生可能エネルギーは再エネ賦課金が含まれないため、その分電気代が下がる仕組みになっています。再エネ賦課金とは、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)を支えるために国民全員が負担しているもので、電気料金のなかに含まれています。

使用した電気量に応じて再エネ賦課金の請求額も高額になります。

「自家消費型太陽光発電」なら、電力会社からの電気購入量を削減できるため、再エネ賦課金も同時に減らすことが可能です。

たとえば、京都市に本社を置く住友グループ電気機器メーカーの日新電機は、研修施設で発電した電力を施設内で自家消費しており、研修施設における再エネ比率は37.2%と高い水準になっています。

休日は電気が余るので、自己託送制度を利用して、余剰電力を本社や離れた工場へ託送する実験を開始しました。この取り組みにより、再エネ比率が53.2%まで上昇、約1.5倍の環境負荷を削減し、CO2の排出量削減を4倍に増やせると予測されています。

自己託送によって、自家消費を行える範囲が遠方の自社施設やグループ企業の施設まで広がるので、企業全体またはグループ企業全体の電気代削減の効果が期待できます。

自己託送のデメリット

自己託送による太陽光発電導入のデメリットは6つです。

①低圧太陽光発電は対象外

②広い土地が必要

③ペナルティが発生の可能性がある

④非常用電源として使えない可能性がある

⑤余剰電力を売電できない

⑥送電サービス料金がかかる

①低圧太陽光発電は対象外

自己託送による自家消費は高圧から特別高圧規模の太陽光発電設備限定となっています。そのため、システム容量50kW未満の低圧設備では自己託送による自家消費は不可能です。

何故なら、太陽光発電設備と事業所の距離が離れているほど、系統で送電できる電力が減少してしまうからです。低圧の発電量では電圧が弱く、距離が離れている事業所まで電力を送電する力はないと言えるでしょう。そのため、低圧の太陽光発電は自家消費型のみが認定されるようになりました。(ソーラーシェアリングを除く)

②広い土地が必要

自己託送の場合、太陽光発電設備は屋根ではなく野立て設置するため、そのための土地が必要となります。もし200kWの発電設備を設置する場合、最低800坪以上の土地が求められるでしょう。そのため、法人名義での土地が無い場合、土地の購入、またはレンタルする必要があります。

③ペナルティが発生する可能性がある

自己託送は発電設備から事業所へ送電する30分毎の送電量の計画値を契約時に決定します。なぜなら、電力の需要量と供給量を一致させる同時同量のバランスが崩れてしまうと、電気の供給が不安定になり、停電になる可能性があるからです。そのため、送電する電力量が不足した場合、負荷変動対応電力料金を電力会社に支払わなければなりません。

「契約時に決定した電力量」と「実際に送電した電力量」の差分(インバランス)が±3以上(自己託送制度適応の場合は±10%)離れてしまうと、「変動範囲超過電力」として、昼間の時間帯であれば3倍以上の料金が徴収されてしまうのでご注意ください。「インバランス料金」は送配電事業者によって異なりますので、契約時に必ず確認しておきましょう。

④非常用電源として使えない可能性がある

通常の太陽光発電を屋根に設置している自家消費の場合、系統を介さず発電した電気を事業所へ直接送電するため、系統が止まってしまっても影響を受けないので、停電時でも電気を使う事が可能です。

しかし、自己託送は系統を通じて遠隔地にある発電設備の電気を事業所へ送電する仕組みであるため、災害やインバランスなどで系統に不具合が生じた場合、電気が送られてこず、非常用電源として使えない可能性もあります。

⑤余剰電力を売電できない

固定買取制度による全量売電は発電した電気を売り、基本的には自社で使用することできません。

自己託送制度は発電した電気を、自社から離れた使用場所へ送電しますが、使用場所で使わずに余った電気については、インバランス料金にて精算されるため、売電することができません。

⑥送電サービス料金がかかる

接続送電サービス料金は以下のようになっています。

参照元:関西電力送配

https://www.kansai-td.co.jp/consignment/agreement/charge.html

標準接続送電サービス

基本料金(1kW)

高圧:517.00円

特別高圧:407.00円

電力量料金(1kW)

高圧:2.59円

特別高圧:1.20円

時間帯別接続送電サービス

基本料金(1kW)

高圧:517.00円

特別高圧:407.00円

電力量料金(1kW)

高圧:2.81円(昼間)、2.28円(夜間)

特別高圧:1.28円(昼間)、1.11円(夜間)

日新電機がPV自己託送対応EMSを開発

日新電機株式会社は、太陽光発電の自己託送を自動運用するPV(太陽光発電)自己託送対応EMSを開発し、2020年7月より販売開始しました。持続可能な社会の実現に向けてCO2排出量削減に取り組む企業が増加する中、太陽光などの再生可能エネルギーを自家消費する方法は世界的に見ても高評価されています。太陽光発電の自己託送は環境価値向上の実現に有効であり、PV自己託送はその実現に貢献できる製品だと言えるでしょう。

PV自己託送対応EMSの特徴は2つです。

①煩雑な太陽光発電の自己託送運用を自動化し、運用労力を大幅低減

②不安定な太陽光発電のみでも自己託送を実現

①煩雑な太陽光発電の自己託送運用を自動化し、運用労力を大幅低減

自己託送を行う場合、余剰電力量を予測して託送計画を立案し、計画地の提出や更新が必要となります。更にペナルティを発生させないために、計画値は同時同量になるよう制限しないといけないため、運用には非常に労力がかかります。しかし、PV自己託送対応EMSは煩わしいこれらすべての作業の自動化が可能となっています。

②不安定な太陽光発電のみでも自己託送を実現

太陽光発電は天候などにより発電量が変動するため、太陽光発電のみでは託送計画の立案が困難となります。しかし、PV自己託送対応EMSは太陽光発電の余剰電力を予測し、そのデータに基づく託送計画の立案が可能となります。余剰電力が計画値を上回りそうになっても、蓄電池などの調整電力がなくてもリアルタイム制御で太陽光発電の出力を抑制し、計画値と同時同量になるよう制御可能となっています。更に蓄電池や発電機があればそれを調整電力にすることも可能です。

まとめ

自己託送による自家消費太陽光発電について解説してきました。以下まとめになります。

・自己託送を利用すれば、場所や環境に関係なく遠隔地の太陽光発電設備で発電した電気を送電でき、自家消費が可能となる

・企業グループ全体で再生可能エネルギーを利用するため、CO2排出量削減や電気代削減も可能

・SDGsやRE100イニシアチブといった環境経営にもつながるので、企業のイメージアップになる

自己託送はデメリットもありますが、メリット面を考慮すると自己託送による自家消費型太陽光発電は今後多くの企業に活用されていくのではないでしょうか。今後の自己託送による自家消費型太陽光発電の動向が楽しみです。

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