あと付け蓄電池は求めるパワーコンディショナ機能で種類が異なる?タイミングを見極めて導入しよう

災害により長期間停電が発生すると電気が使えなくなり、生命の危機につながる可能性が高くなります。太陽光発電システムを災害対策として設置している場合、太陽がある限り電気を作ることができますが、悪天候や夜間ではその効力を発揮できません。この場合、オススメするのがあと付け蓄電池です。

すでに太陽光発電システムを設置している場合、蓄電池をあと付けするとどのようなメリットが得られるのでしょうか。今回はすでに太陽光発電システムを設置している場合、蓄電池をあと付けする際に知っておくべきポイントを解説します。

蓄電池のあとづけ検討に適したタイミング

蓄電池のあと付けは、大型台風や震災による停電など、災害対策や備えとして停電時の電源を確保したい時に考える方は多いのではないでしょうか。それ以外の蓄電池のあと付けを検討に適したタイミングは以下のとおりです。

  • 保証期間外に太陽光発電システムのパワーコンディショナが故障、または寿命(10年~20年が目安)が近い
  • FIT期間満了が近い、または終了するので自家発電自家消費に切り替える
  • あと付け蓄電池対象補助金の公募開始(2022年度は蓄電容量1kWhあたり3.7万円の補助金が出ている。蓄電池あと付け価格相場は機器購入費+設置工事費で80万~200万円程度

太陽光発電に蓄電池を後付けする際に考えるべきポイント

太陽光発電に蓄電池を後付けする際に一番最初に考えるべきポイントは以下のとおりです。

設置済みの太陽光発電システムの状況からどちらの蓄電池タイプを選ぶか

1つ目は「設置済みの太陽光発電システムの状況からどちらの蓄電池タイプを選ぶか」についてです。

太陽光パネルで発電された電力は直流なので、家庭用で使用するために専用のパワーコンディショナを経て交流に変換されます。交流になった電力は、蓄電池専用のパワーコンディショナを経て直流に変換され、蓄電池に貯蓄されます。

そのため、蓄電池を太陽光発電システムに組み込む場合、あと付けで選ぶ蓄電池の種類はパワーコンディショナの機能によって異なります。

  • 単機能型蓄電池:蓄電池専用のパワーコンディショナ
  • ハイブリッド型蓄電池:1台で太陽光発電システムと蓄電池を兼用するパワーコンディショナ

どちらを選ぶかは、設置済みの太陽光発電システムの状況によって異なってきます。

たとえば、太陽光発電システムを設置してから10年目の場合。ちょうどメーカー保証が終了するタイミングですが、今まで順調であり数年後もパワーコンディショナが故障する可能性は低いだろうと予想した場合、あと付け蓄電池として蓄電池自体が単独で機能できるものを設置した方がいいでしょう。

停電時にどのように電気を使いたいか

2つ目は「停電時にどのように電気を使いたいか」についてです。

停電時にどのように電気を使いたいかによって必要な蓄電池の機能は異なります。停電時の際、考えるべき点は以下のとおりです。

  • 200V電源を使用するかしないか
  • 全ての電源のカバーを求めるか特定の電源の利用だけでいいか

後付け蓄電池に200V電源を使用するかしないか

災害時に停電すると、エアコン、冷蔵庫、照明などが使用できなくなるだけでなく、スマートフォンの充電やテレビも使えなくなるので備えていない場合、災害状況の情報を得ることすらできない可能性があります。蓄電池があればある程度カバーすることはできますが、エアコンやエコキュートなどは200V電源のため、対応できる蓄電池でないと使用することができません。真夏や真冬時にエアコンが停止すると命の危険に及ぶこともあるので、あと付け蓄電池を選ぶ際は、停電時に200V電源を使用するかしないかよく考えてから選びましょう。

後付け蓄電池に全ての電源のカバーを求めるか特定の電源の利用だけでいいか

蓄電池はどれぐらい電源のカバーを求めるかによって以下のように分かれます。

  • 全負荷型蓄電池:分電盤全てをバックアップするので200V電源も利用可能
  • 特定負荷型蓄電池:事前に特定しておいた分電盤内の負荷(子ブレーカ)のみ停電時に利用可能

特定負荷型蓄電池は、メーカーによって事前に特定負荷を2つから5つ程設定可能ですが、200V電源に対応していないものが多いです。

全負荷型蓄電池は200V電源対応可能であり停電時に住居全体の電力をバックアップします。そのため、高齢者や小さい子どもがいる家庭など、停電時にエアコンが使えないと命に係わる場合やオール電化住宅などには全負荷型蓄電池がよいでしょう。しかし、その分容量が大きくなるので価格が高くなります。

あと付け蓄電池を選ぶ際は、停電時に家全体の電源のカバーを求めるか特定の電源利用だけでいいのかよく考えてから検討しましょう。

パワーコンディショナの機能によって異なるあとづけ蓄電池の種類

パワーコンディショナの機能によって、あと付け蓄電池の種類は以下のように異なります。

単機能型蓄電池

単機能型とはすでに設置してある太陽光発電システムのパワーコンディショナを取り外さずに蓄電池用パワーコンディショナを別途取り付けることで、太陽光発電システムと別に単独で機能することが可能な蓄電池のことです。

単機能型蓄電池は、太陽光発電システムのパワーコンディショナが故障しないと予想した場合選択肢としてオススメです。

あと付けで単機能型蓄電池を設置するメリット

あと付けで単機能型蓄電池を設置するメリットは以下のとおりです。

  • すでに太陽光発電システムを設置している方にとって既存のパワーコンディショナ取り外しなどがない分、ハイブリッド型蓄電池よりも割安になる
  • 太陽光発電システムと別で単独で機能するため太陽光発電システムの保証に影響されず、蓄電池には蓄電池のメーカー保証がつき、太陽光発電には太陽光発電メーカーの保証が残る
  • 太陽光発電と蓄電池のパワーコンディショナが別々に存在するため複雑な変換処理がなく、どちらかに不具合が発生してもつられて悪影響がでな

あと付けで単機能型蓄電池を設置するデメリット

あと付けで単機能型蓄電池を設置するデメリットは以下のとおりです。

  • 故障しないだろうと単機能型蓄電池を設置した途端、太陽光発電用のパワーコンディショナがメーカー保証期間外に故障する可能性があり、その場合別途修理・交換費用が発生する
  • パワーコンディショナで直流電気を交流電気に変換する度に5%ほど電気ロスが発生するので、それぞれパワーコンディショナを持つ単機能型の場合電気変換ロスが多くなる
  • 別途蓄電池用のパワーコンディショナを設置するため、その分設置スペースが追加で必要となる

ハイブリッド型蓄電池

ハイブリッド型蓄電池とはすでに設置してある太陽光発電システムのパワーコンディショナを取り外し、太陽光発電と蓄電池のパワコンが一体化したパワーコンディショナに切り替えて設置するタイプです。

ハイブリッド型蓄電池は、太陽光発電システムを設置して10年以上経過していてパワーコンディショナが故障した、あるいはもうじき故障すると予想した場合オススメです。

あと付けでハイブリッド型蓄電池を設置するメリット

あと付けでハイブリッド型蓄電池を設置するメリットは以下のとおりです。

  • パワーコンディショナが1つなので太陽光パネルから蓄電池へ直流のまま送ることができるので電気ロスが少ない
  • 新しいパワーコンディショナに交換するので新たに蓄電池メーカーの保証が10年~15年付く

あと付けでハイブリッド型蓄電池を設置するデメリット

あと付けでハイブリッド型蓄電池を設置するデメリットは以下のとおりです。

  • パワーコンディショナを取り外すためまだ故障していない場合コストが高くなる
  • 太陽光発電システムは一式でメーカー保証が出ているため、保証期間内にパワーコンディショナだけ変更すると保証が喪失する
  • パワーコンディショナの性能と機能によって太陽光発電システムの発電量を全部利用できない可能性がある

あと付け蓄電池を可能にするパワーコンディショナ

あと付け蓄電池を可能にするパワーコンディショナを2つ紹介します。

業界初蓄電池のあとづけを可能にした「パワーコンディショナR」

1つ目は「パワーコンディショナR」です。

蓄電池をあとづけする場合、すでに設置済みの太陽光発電専用パワーコンディショナを取り外し、ハイブリッド型蓄電池と兼用できるパワーコンディショナに交換する費用が発生します。パワーコンディショナの標準的な交換費用は20万円とされており、どちらも導入したいが予算的に足りないという方は少なくないでしょう。

しかし、2018年「パナソニック 住宅用創蓄連携システムRタイプ」の登場により、パワーコンディショナの交換費用を気にせず、ライフスタイルの変化に合わせて蓄電池のあと付けが可能になりました。パナソニック製蓄電池と充放電コンバータの設置が必要ですが、パワーコンディショナRを導入することで以下のようなメリットがあります。

  • 高い売電価格を確保しつつ蓄電池のあと付けが可能になり、パワーコンディショナ交換の無駄なコストが消滅
  • 電力変換効率96.5%と太陽光発電パネルが発電した電気をより無駄なく変換
  • 各回路ごとの枚数をあわせる必要のないマルチストリング型
  • 蓄電池設置時には「充放電コンバータ」の設置が必要だが従来型に比べると割安

参照:パナソニック「パナソニック 住宅用創蓄連携システムRタイプ」(https://sumai.panasonic.jp/solar/high_pc/r-type.html)

家中まるごと停電対応の蓄電池連携型パワーコンディショナ「JH-55NF3」

2つ目は「蓄電池連携型パワーコンディショナ JH-55NF3」です。

「蓄電池連携型パワーコンディショナ JH-55NF3」は1台で太陽光発電システム、蓄電池、EV(電気自動車)の3連携制御が可能なので、あと付けで蓄電池や別途購入が必用なSHARP製EV用コンバータ(発売時期は2023~2024年)の設置・増設ができます。蓄電池連携型パワーコンディショナのうち、JH-55NF3/40NF2と接続時のみEV連携が可能です

あと付け可能な蓄電池は蓄電池連携型パワーコンディショナ設置後おおよそ5年以内です。

  • JH-WB2021
  • JH-WB1921(2台目の増設が可能)

停電しても分電盤に電気を供給するため各部屋で電気が使用可能であり、コンセントの差し替え不要、エアコンなど200V機器の使用可能な「家中まるごと停電対応」があるので停電時も安心です。

参照:SHARP「蓄電池連携型パワーコンディショナ JH-55NF3」(https://jp.sharp/sunvista/products/power_conditioner/55nf3/)

まとめ

すでに太陽光発電システムを設置している場合、蓄電池をあと付けする際に知っておくべきポイントを解説してきました。以下まとめになります。

  • 蓄電池のあと付けを検討するタイミングは「停電時の電源確保」「太陽光発電システムのパワコンが故障、または寿命が近い」「卒FIT」「あとづけ蓄電池対象補助金の公募開始」
  • あと付け蓄電池を接しする際考えるポイントは「太陽光発電システムの状況からどちらの蓄電池タイプを選ぶか」と「停電時にどのように電気を使いたいか」
  • パワーコンディショナの機能によってあと付けする蓄電池の種類は異なる

太陽光発電システムの寿命は10年から20年くらいであり、発電した電気だけで家中を賄うことは非常に厳しいです。しかし、蓄電池をあとづけすることは太陽光発電システムの現状に適切なパワーコンディショナを同時に新設するため、自家発電自家消費による電気代削減やより効率の良い電気の使い方が可能になります。

太陽光発電システムと蓄電池は高額な商品なので、あと付け蓄電池を検討の際はタイミングを見計らいましょう。

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