太陽光発電のAC-DC変換ロスを削減!無駄がない直流給電システムとは

私たちの生活において、電気は切っても切り離せません。電気がなければ生活が苦しくなることは、台風や自然災害による長期間の停電によって身に染みたのではないでしょうか。災害時にも電気のある生活がしたいと、太陽光発電と蓄電池を組み合わせた自家消費に取り組む人も少なくありません。太陽光発電から私達が使う家電には、どのようにして電気が流れているのでしょうか。その前にAC・DCという電気の流れについて知る必要があります。太陽光とAC・DCの関係とは一体何なのか、解説していきます。

ACとDCとは

電気の流れには2つの方式があります。

・AC(Alternate Current):交流電源、交流電力

・DC(Direct Current):直流電源、直流電力

2つの違いは、DCは一方方向にしか流れないのに対し、ACは電流の流れる方向が変化する事です。

DC(直流)

DCは電気が流れる際に方向や電流(大きさ)、電圧(勢い)が常に変化せず、電線や回路の中を常に一定の向きで流れます。

DCのメリットは2つです。

・一定方向に電流を流すだけなので複雑な回路を必要としない

・電流を流すときのコストがそれほどかからない

DCのデメリットは2つです。

・常に電流が一定方向に流れ続けているため電源を遮断しづらい

・電圧を変える時に手間がかかる

直流用の電気を使う製品は、乾電池のように「+」「-」があり、決まった方向にのみ流れるようになっています。

ACアダプタのように、DCにも直流に変換するDCアダプタやDCコンバータが存在しています。

AC(交流)

ACは一定時間ごとに交互に逆向きに流れ、電圧が周期的に1秒間に50回から60回方向が変化します。街中で見かける電線には、この交流が流れています。

ACのメリットは3つです。

・変圧器を使って電圧を変換しやすい

・発電所から離れた消費地へも高電圧を長距離送電できる

・家庭用コンセントを使う時に極性を意識せずに抜き差しできる

一般家庭で使われているコンセントや照明器具などの電灯は単相交流なので、行ったり来たりを繰り返し続けています。また、コンセントに差して使う電化製品は、交流用の電気を使う製品であれば、プラグをどちらの方向に差しても使うことができます。

しかし、中には交流が使えない電気機器もあります。その場合、パソコンに付属されているACアダプタのように、交流で使う事ができない製品に対して、交流の電気を直流に変換しているのです。

電線にACが使用されている理由

電線には金や銀よりも安価で、電気抵抗の小さい銅やアルミニウムが使われています。銅やアルミニウムでも(大きな電流が流せる)太い電線を日本中に張り巡らせるのは莫大なお金が必要となり、難しいでしょう。

そのため、供給コストを抑えるために電流を小さくし、電圧を高くするため、低コストで電圧の昇圧ができるAC(交流)を使います。電線に電圧の高いACが使われている理由は、送配電設備のコストを抑えるためなのです。

また、電柱には2種類あります。

・高圧配電線(高圧線、上の方にあり、6,600Vの電圧が流れている)

・低圧配電線(低圧線、下の方にあり、100/200Vの電圧が流れている)

電柱についている大きなポリバケツのようなものはトランスと呼ばれる変圧器です。高圧線で遠くから送電されてきた電力を変圧器で低圧線に流せるよう降圧し、家庭や工場などに電気を届ける役割をはたしているのです。

太陽光とAC・DCの関係とは

太陽光発電に必要なソーラーパネルはDCで設計されています。ソーラーパネル同士は直流で接続され、太陽光が照射されると直流電流を送電します。ソーラーパネルから接続箱、集電箱へ送電された後、DCの電気はパワーコンディショナー(パワコン)に送られて行きます。一般的に家電は交流です。そのためパワコンは家電で使えるようDCをACに変換する必要があります。

また、送電網はACとDCが混在しており、それぞれ変換して電気を送電することができるので、使いきれなかった電気は電力送電網を通じて、電力会社に売電する事も可能です。

ACからDCへ変換するにはロスがかかる

現在の家庭や企業で使われている電化製品は、交流でないと動かなくなるのは蛍光灯ぐらいと言われるほど、直流が主流です。送電されてくる電気は交流なのに、何故家電は稼働しているのでしょうか。それは、内部にACからDCへ変換してくれる装置が搭載されているからです。交流を一旦直流に変換し、その後、高周波の交流にして機械を動かしています。その時にエネルギーの損失と電力ロスが起こり、切り替え装置に熱を帯びます。ノートパソコンを使っていて、ACアダプタが熱くなっているのはエネルギー損失が起こっている証拠なのです。

太陽光発電の場合も同様で、太陽光によって発電された電気はパワーコンディショナーやインバータを通じて、一旦直流から交流へと変換され、使用するACアダプターや電気機器内部で再び直流に変換されます。つまり、パワーコンディショナーは太陽光発電の電力(DC)を家庭や工場で使う交流(AC)に変換する電源装置です。太陽光発電で発電したDC320Vから400Vを家庭用AC100Vに、工場にはAC200Vに変換します。

パワーコンディショナーは送られてきたDC電力をAC100Vや200Vに変換して分電盤(ブレーカー)へと送ります。DCからACへの変換効率は100%ではなく、およそ95%です。残りの5%は変換時にエネルギーロスとして熱となります。動作しているパワーコンディショナーを触ると熱を帯びているのはそのためです。

電力ロスを減らす直流給電

DCからACへ、ACからDCへの二度の変換時に生じる変換ロスを削減し、効率上昇を目的として取り組むことを直流給電システムといいます。電力会社の送電網や電柱によって配電される系統電力を直流化することとは異なり、屋内配線の直流化を意味しています。

直流給電システムのメリットは5つです。

・直流のまま給電できるので(変換いらずで)電力ロスがなくなる

・電力源を全て自動でコントロールしているため、災害時にも電気が途切れない

・太陽光だけでなく発電所の電力や蓄電池など、AC・DC関係なくミックスして利用する事ができる

・使いたい場所で使いたい分だけ電気を個別にコントロールできる

・電力会社から配電されるものだけを使うのではなく、水力発電や太陽光発電、電気自動車など、どのエネルギーによって電気を作り出すか選択する事ができる(分散型電力)

しかし、直流給電には2つの欠点があります。

・電圧変更(昇圧・降圧)が難しい

・電流の開閉が困難であり、開閉で火花が発生する事がある

直流は直流のまま電圧を変えることができません。家電などは低電圧なので、DC-DCコンバータという変換器を使い、内部で一旦高周波の交流に変換して電圧を変え、整流してから直流を出力する事ができるでしょう。

しかし、高電圧や大電流の場合はそれなりの大型装置が必要となり、コストがかかってしまいます。

また、交流は電圧が常に変化し、定期的に0Vになる瞬間が生まれるので、容易に電流の開閉ができます。しかし、直流は常に電圧が一定で0Vになる瞬間がありません。そのため電流の開閉が難しく、コンセントの抜き差しで火花が発生する可能性があります。直流で生じた火花は消えにくいため、火事の原因になる危険性が高くなります。また、給電電圧が高いと感電する可能性も出てくるでしょう。

産業用や家庭用の直流給電を実現させる為には、直流による電源電圧が標準化される必要があります。住宅用の直流給電の標準化案として12V・24V・48Vがあります。48Vは電力効率が優れていますが、家庭内で使うには感電時の危険性が高くなる可能性があります。12Vと24Vは電力消費量が多いデスクトップパソコンやテレビへの給電が難しいです。

エアコンやIH調理機など消費電力が大きすぎるものには使えないため、交流給電も併用する事やHVDC(高電圧直流)を併用する事で使えるのではないのかという考えがあるようです。

直流給電システムは普及しつつある

家庭内の電気製品を全て直流給電によって賄えるようになれば、DC-AC変換の回路を省くことができるので、電力ロスだけでなく、コストや容積、故障を減らすことができます。

そのため「直流給電システム」の製品化に向けた動きが活発化しており、DCで動く家電も開発されつつあります。

たとえば、扇風機は一般的にACで動くものが主流です。

ACで動く扇風機の特徴

・とにかく安い(2,000円~4,000円以上)

・タワー型扇風機や羽なし扇風機など、形や風量調節のバリエーションが豊富

DC扇風機の特徴

・直流モーターを使っているため消費電力が少ない

・駆動音が静か

・電気代が安い

・価格が高い(1万円以上)

 まとめ

太陽光発電とAC・DCについて解説してきました。以下、まとめとなります。

・電気の流れにはDC(直流)とAC(交流)がある

・太陽光発電により作られた電気を家電が使うにはDC→AC→DCと変換する電力ロスが生じている

・直流給電システムを使えば、電力ロスを削減できるだけでなく、直流交流関係なく電気をミックスして使う事ができる

脱炭素化に向けて(再生可能エネルギーを生み出す)太陽光発電を普及させた固定価格買取制度(FIT)ですが、(10年間という制約があるため)2019年から卒FITが現れ始めました。そのため、電力の買取価格が年々低下していくのを受けて(太陽光発電や蓄電池による)自家消費へ電気の使い方を切り替える人も増えつつあります。

直流給電システムは太陽光発電だけでなく風力発電など自分で作り出す電気を選択し、ACからDCに変換することがないためロスも起こらず、太陽光からでも蓄電池からでもAC・DC関係なくミックスして電気を使う事ができます。変換ロスが起こらないという事は、消費電力を無駄に消費せずに機械が熱を発生させる事も防ぎます。そのため、災害時にも途切れることのない電力を使う事ができるかもしれません。これからの直流給電システムに大注目です。

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