太陽光発電は固定価格買取制度(FIT)によって普及が進んできましたが、寿命を迎えた太陽光パネルをどうするのかが大きな課題となってきます。FIT時に導入した太陽光パネルが一斉に寿命を迎え、寿命を25年とした場合の廃棄量は、2020年に3000t、2030年に約2.2万t、2036年で約17~28万tが見込まれています。FIT適用案件に廃棄費用の報告を義務化したことからも、不法投棄への警戒が伺えます。
しかし、古くなった太陽光パネルは廃棄以外にも選択肢があります、それがリサイクルです。今回は寿命を迎える太陽光パネルの廃棄やリサイクルについて解説します。
太陽光パネル廃棄
太陽光パネルを廃棄する場合、産業用廃棄物になります。借地で事業を行っている場合、土地返還時の原状回復を義務付けられているため、賃借期間を満了した時点で、ほとんどのパネルは撤去されるでしょう。寿命を迎える太陽光パネルは2030年から増大し2040年には2018年廃棄量の約200倍になるといわれています。
不法投棄問題
太陽光パネルは廃棄処理するのにとてもコストが掛かるため、そのまま放置される可能性があります。太陽光発電の売電価格には、あらかじめ廃棄費用を捻出できるよう設定されているため、売電収入から廃棄費用を積み立てておけば問題がないのですが、実際に積み立てている人は多くはありません。
不法投棄が何故問題なのか、それは太陽光パネルには鉛やセレン、カドミウムなどといった有害物質が含まれており、適切に処理しなければ有害物質が流出して土壌汚染に繋がる危険性があるからです。太陽光パネルに有害物質が含まれている事はパネルメーカーからの情報不足により、一般的に知っている人は少なく、不適切な処理をされると知らず知らずのうちに有害物質を流出させ、被害が増大します。
事業者として求められること
太陽光パネルの廃棄処理はメーカーや発電事業者、解体事業者などに責任が求められています。事業者として求められていることは3つです。
・廃棄費用の積み立てと報告の義務化
・太陽光パネルの有害物質情報を収集しておく
・リサイクルを検討
廃棄費用の積み立てと報告の義務化
2018年7月から、FIT認定を受けた事業者は廃棄費用の積立計画や進捗状況を報告することが義務化されました。事業者は、事業終了後の廃棄費用を想定し、毎月の積立金額を明らかにしなければなりません。面倒だと思われるかもしれませんが、事業終了時に新たな予算を組むことなく太陽光パネルを適切に処分する事ができます。
太陽光パネルの有害物質情報を収集しておく
何故情報を収集した方がいいのか?それは有害物質の少ない製品を選ぶことで、廃棄費用抑制につながる可能性があるからです。
太陽光パネル廃棄後に有害物質の流出や拡散が起こらないよう、太陽光発電協会は2017年12月にガイドラインを策定しました。協会は太陽光発電パネルのメーカーや輸入販売業者、産業廃棄物処理業者に対し、情報の開示を行うことを求めています。
リサイクルを検討
太陽光パネルから回収できる資源は、高性能なガラスや電子機器、銀などがあり、リサイクルせずに処分した場合、年230億~370億円相当の有用な資源が未回収になると言われています。しかし、太陽光パネルには鉛などの有害物質も含まれているので、費用面ではリサイクルよりも埋設処分した方が安いです。
しかし、寿命を迎えた太陽光パネルの排出量は2020年には2,808t、2030年には28,788t、2039年には775,085tとなり、枚数にすると約3,875万枚もあると環境省は試算しています。国土が限られた日本において、これほどの量の太陽光パネルの廃棄物を土に埋めるのは難しく、再資源として太陽光パネルを処理し、循環しなければいけません。
太陽光パネルは電極やシリコンが何層にも強力に接着されていて、その中には有害物質である鉛も含まれています。そのため、有害物質が付着したままではリサイクル可能な資源も再利用する事が難しいとされていました。しかし、現在リサイクルの技術は進歩し続け、太陽光パネルの適切なリサイクル技術により大量廃棄に対応可能となり、廃棄問題は解決に向かうのではないかと期待されています。
太陽光パネルをリサイクルするメリット・デメリット
太陽光パネルをリサイクルするメリット・デメリットは以下の通りです。
太陽光パネルをリサイクルするメリット
太陽光パネルをリサイクルするメリットは3つです。
・不法投棄などによる汚染物質を防ぎ、環境に優しい
・安価に量産でき、保湿性も高い衣料品を作り出せる
・寿命が25年の太陽光パネルの場合、銀やガラスなど230億~370億円相当の有用な資源が回収できる
太陽光パネルをリサイクルするデメリット
太陽光パネルをリサイクルするデメリットは3つです。
・リサイクルをしている会社が少ない
・リサイクルできることを知っている人が少ない
・いざリサイクルをしようと思っても情報量が少なく、どこに連絡したらいいのかわからない
太陽光パネルのリサイクル工程
太陽光パネルは以下の通りに構成されています。
・フレーム
・ガラス
・封止材
・太陽電池
・バックシート
・ジャンクションボックス
水海道産業株式会社が行っている太陽光パネルリサイクル工程を紹介します。
①導線をカットした太陽光パネルをアルミ枠解体機にそのまま投入し、アルミ枠、ガラス、セル、バックシートに分別
②剥離したガラスをガラス精製システムで異物を除去し、きれいなガラス製品を採取
③剥離・分別した各製品は有価物として販売でき100%リサイクル
アルミ枠、導線、電極は金属商・古物商等に販売、銀は回収して売却、発電セルは精錬工場へ販売されます。バックシートはセメント工場の助燃剤になります。剥離したガラスをエッジレス加工後、グラスファイバーメーカーや発砲ガラスメーカー等へ売却されます。
こうして全ての太陽光パネルは100%リサイクルされるのです。
ガラスに強い廃ガラスリサイクル事業協同組合
廃ガラスリサイクル事業協同組合は、環境保全サービスとミツバ資源ほかから構成されており、太陽光パネルリサイクル100%を掲げています。元々ガラス瓶のリサイクルから始まった事業者団体であり、ガラス処理に関して長年の実績を保持しています。太陽光パネルの大量放棄時代を見据え、独自のガラス剥離・分別システムを開発し、現在その普及に努めています。
実際に生まれ変わった製品
太陽光パネルは以下のような製品に生まれ変わっています。
・多孔質ガラス発泡材「ポーラスα」
・衣料品
多孔質ガラス発泡材「ポーラスα」
廃棄太陽光パネルからガラス資源を抽出加工し、OMミキサーで粉砕ガラスと発泡材等を混合、焼成、二次破砕、粒度選別を経て、多孔質ガラス発泡材「ポーラスα」は作成されます。「ポーラスα」は株式会社鳥取再資源化研究所の登録商標です。土壌改良・水質浄化・微生物脱臭等様々な分野に優れており、地球環境を改善し、次世代に受け継いでいくことを目指しています。ため池などの閉鎖性水域では、自然による自浄作用が緩慢なため水質の汚濁が進行しやすく、一度汚濁すると水質改善は非常に困難でしょう。
「ポーラスα」は化学物質を使わず、事前の浄化能力の活性化をおこない水質改善を行うため、水域の富栄養化、病原菌の繁殖、ヘドロの堆積などの水域問題でお困りの方はぜひ検討してみてはいかがでしょうか。浄化対象の水に入れるだけなので電気代不要であり、水中の微生物の浄化作用を高め、水をきれいに保ちます。
建物への負担は極めて軽いため、既存建物への施工も可能で、屋上緑化システムやヒートアイランド防止システムなどの導入実績もあります。 原料がガラス瓶なので、施工後本製品から重金属等の有害物質が溶出することがなく、環境にも優しい製品となっています。
衣料品
太陽光発電が増加する中、世界的に廃パネル大量発生が起こるであろうと見込み、福岡市のパネル検査機器メーカー「システム・ジェイディー」と台湾のリサイクル企業「光宇材料」が太陽光パネルを衣料品に使われる繊維にリサイクルする取り組みを行っています。
システム・ジェイディーは2002年に設立され、太陽光パネルの中から断線するなど不具合のあるパネルを特定する機器「ソコデス」を開発した会社です。ソコデスはこれまでに国内外で約700台の販売実績があり、2018年に台湾の顧客向けにソコデスで不具合パネルを発見し、光宇材料がリサイクルするという協力体制を築きました。
光宇材料は太陽光パネルや半導体をリサイクルする時に発生するシリコンのごみを粉砕して、ケイ素繊維に再利用する技術を開発している会社です。
シリコンは耐熱性や保温性に優れていることから、「ケイ素繊維」として衣料品の材料に用いられることが増えつつあります。
ケイ素繊維は耐久性に優れ、2017年に台北市で開催されたユニバーシアード夏季大会で台湾代表チームのユニホームにも採用されました。保温性も高く、天然の羽毛より安価に量産できるため、ダウンジャケットや布団の中綿にも使われています。
コストパフォーマンスも高く、太陽光パネルのリサイクル方法として大変優れた方法と言えるでしょう。
まとめ
太陽光パネルとリサイクルについて解説してきました。以下、まとめとなります。
・太陽光パネル大量廃棄を迎える前にどうするのかを考えておかなければいけない
・太陽光パネルをリサイクルすると有用な資源を回収できる
・太陽光パネルをリサイクルできる会社がまだまだ少ない
適切な処理をせずに不法投棄すると有害物質が土壌汚染をし、環境汚染に繋がってしまいます。そうならないためにも、太陽光パネルを適切に処理し、有用な資源回収だけでなく、私達の生活を豊かにしてくれる衣料品にリサイクルする道を選ぶのが良いでしょう。使用済みの太陽光パネルのリサイクルなどの適正処理が可能な産業廃棄物中間処理会社の全国27社一覧表を、リサイクルを促進するためにJPEAが公表しています。リサイクルを検討している方は一度覗いてみてはいかがでしょうか。ぜひ太陽光パネルを不法投棄・放置せずにリサイクルを検討してみてください。