自家消費型太陽光発電のうまみもあって初期投資0円のPPAモデルとは?

近年、環境に対する配慮が世界でも重要となり、グローバル企業の再生可能エネルギー導入拡大を進めている「RE100」に加盟する企業、加盟に向けて取り組む企業が増加しています。RE100は長期的目標として、2050年までに100%再生可能エネルギーを達成することを想定したイニシアチブです。世界中の投資家が「環境に配慮する企業は持続可能な経営をする」と認識する風潮が強くなってきており、多くの企業が環境経営を意識しています。太陽光発電設備を設置しても電力会社に売電しているのであれば、企業として環境価値のある電気の使い方とは言えません。

そこで注目されるのが「自家消費型太陽光発電」の「PPAモデル」です。自家消費型太陽光発電は、自社施設に設置した太陽光発電設備による電気を自社でそのまま使う事です。環境価値のある電気の使い方として大変魅力的なのですが、自家消費型太陽光発電は設備投資が高額であり、多額の初期費用が必要です。

それに対し、PPAモデルは太陽光発電の初期投資がゼロです。太陽光発電導入企業を一気に増加させたPPAモデルとは一体何なのか?解説していきたいと思います。

PPAとは

PPAモデル(Power Purchase Agreement Model)とは、電力会社が企業にソーラーパネルを無償で設置し、企業はソーラーパネルで発電された電力を電力会社から買い取るというモデルです。

①【太陽光発電システムオーナー】が【電力会社】に発電所・設置・メンテナンス費用を支払います。

②【太陽光発電システムオーナー】と【太陽光設置場所提供者】の間で電力売買契約を結びます。

③【電力会社】が【太陽光設置場所提供者】の建物の屋根などに太陽光発電設備を設置します。

④【太陽光設置場所提供者】は太陽光発電所で発電した電気を【太陽光発電システムオーナー】から電力売買契約に基づいた料金で購入します。

簡単に言うと、電力会社を通じて太陽光発電設備を第三所有者に置いてもらう代わりに、その電気を買う約束をするという事です。(施設の所有者の立場で考えた場合)

契約期間後には発電設備が自社に譲渡され、引き続き電気代節約等に活用できます。

PPAモデル太陽光発電では、FIT制度に影響されず、屋根オーナーとの電力売買契約となるので、FIT制度以上、電力会社の電気代以下の料金で売電する事が可能です。 アメリカではこのPPAモデルが確立されたことにより、住宅用の太陽光発電システムの普及が進みました。住宅用の太陽光発電システムのうち、70%以上がこのPPAモデルと言われています。

PPAモデルは「ソーラーPPA」や「第三者所有モデル」、「オンサイト発電サービス」などとも呼ばれます。

自家消費によるCO2削減を算出し、CSR報告書やwebサイトで情報開示できるため、企業価値向上のアピールが可能です。PPAには審査があり、契約期間や電気利用料金単価は審査のもと契約で決定されます。

PPAモデルの具体例

具体的な事例としてドコモショップを紹介します。

2011年に設立された株式会社NTTスマイルエナジーは、太陽光設備の遠隔監視装置(エコめがね)の販売や再生エネルギー発電事業を行っています。NTTスマイルエナジーはドコモショップに太陽光発電設備を無償設置・保守を行い、発電した電力はドコモショップに給電・販売されます。

これにより、ドコモショップは災害時の充電サービス提供による顧客満足度向上、自家消費による電気代削減、及びCO2削減による環境への取り組みを行う事ができます。

ドコモショップのメリットは、災害時の充電サービス提供による顧客満足度向上、自家消費による電気代の削減、及びCO2削減による環境への取り組みが行えることです。

PPAモデルで太陽光発電を導入するメリット

PPAモデルが注目を浴びているのは、以下の大きなメリットがあるからです。

①初期投資がゼロ(契約締結諸費用は別途必要)

②社内決裁がしやすい

③将来的に電気代上昇リスクを引き下げられる

④契約期間後に発電設備が無償で譲渡される

⑤ESG投資とサプライチェーン排出量

⑥太陽光パネルによる遮熱効果と空調設備の改善

①初期投資がゼロ(契約締結諸費用は別途必要)

太陽光発電設備は導入、運転管理、メンテナンスなど様々な費用、コスト、リスクなどがかかるため、考えながら維持管理・所有しなければいけません。

それに対し、PPAモデルは太陽光発電設備の設置、管理やメンテナンスは設置事業者が行うため、施設を持つ側(電気を買う側)は太陽光発電設備の設置費用を負担せずに済み、リスクやコストを最小限に抑える事が出来ます。

太陽光発電設備を設置した発電事業者から電気は購入するものの、再生可能エネルギー由来の電気をそのまま使っているので、PPAも「環境価値のある電気を使っている」と言えるでしょう。初期投資ゼロ(契約締結諸費用は別途必要)で、環境価値のある電気を調達することができるのです。

発電した電気を一定期間購入するなどの条件はありますが、大きな初期投資や運用負担をゼロで太陽光発電によるエコな電気を使う事ができるのです。

②社内決裁がしやすい

PPAモデルは太陽光発電設備を自社で所有しないため、故障発生時の対応やメンテナンスなど、全て発電事業者の管轄となります。契約した電気料金を支払うだけでよく、減価償却を計算する必要もありません。そのため、導入までの社内決裁がしやすく、導入障壁が低いというメリットがあります。

③電力料金の上昇リスクを回避

大手電力会社の電気料金には、「燃料費調整額」や「再生可能エネルギー賦課金(再エネ賦課金)」など、従量利用分以外の費用も含まれています。これらの価格は今後の情勢によって変動する可能性があり、電気代が大きく上昇してしまうリスクがあるかもしれません。経済産業省の予想によると、2030年までの再エネ賦課金は2.61円/kWhとされていましたが、2020年時点で既に2.98円/kWhまで高騰しています。電中研社会経済研究所の研究結果では2030年の再エネ賦課金は3.5~4.1円/kWhまで年々上昇していくと新たに予測されています。契約期間中の電気料金単価は基本的に定額であり、太陽光発電によって電力会社からの購入電力を削減することで、電気代削減と今後の再エネ賦課金の上昇リスクを抑制することが可能です。

④契約期間後に発電設備が無償で譲渡される

一般的に10年以上の契約期間が終了した後、太陽光発電設備を無償で譲渡されます。太陽光発電の耐久年数は平均で20~30年と言われているので、譲渡後は安心して契約期間が終了しても電気料金なしで自家消費を継続する事が可能です。

⑤ESG投資とサプライチェーン排出量

ESGとは、経営における環境・社会・管理への取り組みを考慮した投資です。投資判断にESGを取り入れる流れが世界的に広まっており、日本でも拡大していっています。自家消費太陽光発電導入による環境への貢献は、今後企業にとって有利に働くかもしれません。

サプライチェーン排出量とは、事業活動における製品の原材料・部品の調達から、製造、在庫管理、配送、販売、消費までの全体の一連の流れで発生する温室効果ガスの排出量です。CSR報告書やwebサイトで公開可能で、ESG投資の判断材料として自社の評価を高めることができます。

⑥太陽光パネルによる遮熱効果と空調設備の改善

自家消費型太陽光発電を事業所の屋根に設置すると、パネルと屋根の間にある隙間に空気層が発生し、夏場は施設内の温度上昇を抑え、冬場は温度低下を防ぐことが可能です。

また、太陽光パネルが屋根への直射日光や雨などを防いでくれるので、屋根の劣化速度を遅らせる効果もあります。

PPAモデルのデメリット

PPAモデルのデメリットは以下の通りです。

①10年以上の長期契約

②設置場所に制約がある

③発電設備の交換や処分ができない

④譲渡後メンテナンス費用が発生

⑤自家消費型よりも電気代削減率が低い

①10年以上の長期契約

太陽光発電設備をPPAモデルで導入した場合、ほとんどが10年以上の長期契約になります。そのため、長期間の利用を想定して、契約内容を詳細に確認しましょう。

②設置場所に制約がある

PPAモデルは未使用スペースを活用できますが、太陽光発電設備を設置するためには建物の補強工事など、一定の強度を保つために費用が掛かる事があります。

③発電設備の交換や処分ができない

PPAモデルの場合、太陽光発電設備は別会社の所有物であるため、パネル交換や処分などが出来ません。そのため、建物のリニューアル時には注意しましょう。

④譲渡後メンテナンス費用が発生

PPAモデルは、契約期間終了後太陽光発電設備を譲渡されます。しかし、譲渡後は自社でメンテナンスをしなければいけません。

⑤自家消費型よりも電気代削減率が低い

PPAモデル導入で電気代がいくら下がるのかは、現在の電気契約先とPPA事業者が提示する電気料金により異なるので、PPA導入の際は複数社からシミュレーション依頼をするのがいいでしょう。

何故PPAの方が自社保有に比べ電気代削減効果が低くなるのか、それは発電量に応じた電気料金をPPA事業者に支払う必要があるからです。自家消費型太陽光発電を保有している場合、電力会社から購入する電気と違い、ゼロ円で電気代を使用する事ができます。この差分が自社保有とPPAの電気代削減率に違いを出しています。普通に電気会社から電気料金を購入するよりかは電気代だけは割安になる場合が多いですが、自家消費型と比べるとコストが出てしまいます。しかし、自家消費型太陽光の場合、初期導入費用が高く、PPAモデルはゼロ円で導入できます。どちらが自社にとって良いのかを考えてから導入することをオススメします。

⑥途中解約および契約中の処分は不可

PPAは長期契約を原則としているからこそ、初期費用0円での導入が実現可能となっています。そのため、途中解約した場合違約金の発生や、太陽光設備を買い取らなければいけない可能性が発生します。

まとめ

PPAモデルについて解説してきました。以下まとめになります。

・自家消費型太陽光発電と違い、PPAモデルは導入・メンテナンス・工事費など初期費用が0円

・PPAモデルを導入すると再生エネルギーによる電気を使うため、環境貢献に繋がる

・契約終了後、太陽光設備をもらうことができる

自家消費型太陽光発電を導入するには初期費用・メンテナンス費用が発生し、特に中小企業では負担が大きくなります。そのため、 今後は初期費用・メンテナンス費用が発生しない「PPAモデル」による太陽光発電の導入が拡大するのではないでしょうか。PPAモデルは自家消費を行いたい会社に多くのメリットがありますが、デメリットもあります。10年以上の長期契約であり、会社によって電気料金が異なるため、契約内容を詳細に確認しましょう。

また、自家消費型太陽光発電やPPAモデルを導入する事は再生可能エネルギーによる電気を使うことになるため、環境貢献に繋げる事ができます。自家消費型太陽光発電を導入したいが、初期費用で悩んでいる場合、一度PPAモデル導入を検討してみてはいかがでしょうか。

関連記事

TOP